中編
□B
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「あの人から手紙が来たの」
久しぶりに嬉しそうに母がそう言った。
私に笑いかけて大事そうに手紙を抱いて。
「…誰から?」
思わずそう問いかけた。
ああ、質問は許されていなかったんじゃなかっただろうか。
はっと思い出してももう遅い。
「サラよ。サラザール・スリザリン。わかるでしょう?」
母はいつもみたく怒ったりはしなかった。
ただ嬉しそうに笑ってそう言った。
私を抱きしめてくるその手は私に触れてない。
母は彼の事が好きなんだ。
ずっとずっと好きで。
父の事は?
私の事は?
何より誰より彼を愛してる、だなんて。
(私を見て)
私を、菊花を。
貴方の娘としてここにいるのに。
貴方はいつも何処か違う所を見てる。
「母さん」
聞こえない?見えない?
振り向いて。私を呼んで。
私の世界はいつも灰色だ。