中編

□灰色
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「お願いだから出て行って!」
がしゃん、と何か割れる様な音が聞こえた。
母がいる所に恐る恐る近づけば割れたグラスやお皿がたくさん。
さっきまで心配しに来てくれていた男の人はいなくなってる。
多分、帰ったんだと思う。彼は最近毎日来てくれている。

「菊花」
しゃがみ込んだ母は私を見ずにかすれた声で名前を呼んだ。

「行きなさい」
す、と指差されたのは私の部屋。
でも、と私は口ごもった。
―…何があったの?
聞けなかった。聞いちゃいけないと思った。

「行きなさい!」
かすれて震える母の声に押されて私は自室に走って戻る。
扉の向こうでは母の泣き叫ぶ声が聞こえた。
何で泣くんだろう?一体何があったんだろう?
質問する事は許されてない。聞いちゃいけない。


「こんにちは」
翌日外で読書をしていた私に声をかけてきたのは男の人。
最近毎日私の家に…母に会いにくる男の人。
私が軽く会釈すると彼は嬉しそうに傍にしゃがみ込んだ。

「ロウェナの娘の…菊花、だよね?」
私が頷くと彼はますます嬉しそうにして喋る。

「俺はゴドリック・グリフィンドール」
「…グリフィンドール?じゃあ、貴方は…」
「そう。君のお母さんと一緒にホグワーツをつくったんだよ」

あの人は多分、母の事が好きだった。
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