短編

□こんにちは
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嘔吐物をぶちまけたのは駅のトイレ。
具合が悪かった。
酒の飲みすぎだ。

飲んでないとやっていけない。
役立たずと言われた。
いや、言われてはいない。
だけど、あの目はそう言ってた。
私を馬鹿にしていた。そんな顔だった。

ふざけるな。
じゃあ、お前が代わりにやれば良かった。
批判するくらいなら頼むなよ。
どうせあれだ、若い女に逃げられたんだろくそ中年め。

「(死にたい)」
決して悲観的な性格ではない。
だけど、だけど、泣きたくなる。
弱くない、弱い人間じゃない。
だけど、だけど、強くなんてない。

大体みんなそのものさしは一体どこで買ってるの?

「ねぇ、隣のさ、平べったいトイレってどう使うんだよ?」

トイレの鍵をかけ忘れていたと気付いたのはその声で。

「和式?」
「ワシキ」
「しゃがんで、用を、足す、オウケイ?」
「ノー、すわりこみ、ノゥ!」

はちゃめちゃな会話だが、意思の疎通はできた。
10代の少年であろう彼は鼻歌まじりに隣の個室へ入っていく。

「ここ女子トイレ!」

つっこみどころはもっとあった気がしないでもない。
こんにちはよりはこんばんは。
 

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