短編
□不思議の国の
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食欲が無くて。
纏わりついてくる名前も覚える価値の無い人間達にそう言って。
昼食の時間である午後一時。城から出てようやく1人になれた。
読みかけの本を持って木の根元に座り込んで。
晴れてるだなんて珍しい、と時々上を見上げたりして。
目が覚めたのは晴れた空が曇ったそんな時間だった。
「(今、何時だろう)」
考えても分からないけどぼんやりとそう思った。
そろそろ戻ろうか、授業さぼっちゃったかな、だとか。
そんなくだらない事を考えてる僕の視界に不思議な物が入ってきた。
人らしきそれには天へと向いてる白い耳が二つあって。
ひょこひょこと歩くその背中には白い丸い玉の様なものがくっついてて。
そのどちらともふわふわとして風に揺らされている。
変人だと言えばそれは変人だ。
もしくはそういう生き物がいるんだろう。
だってここは魔法界なんだから。
強いて言うのであれば人兎のようなそれは未だに僕の視界に入ってる。