短編

□トランプ!
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大体女子寮に男子が入れないのに、
男子寮に女子が入れるってどう言う事だ。

「…トムだっけ。何か、有名だったよね」
寮の部屋。いつか一人部屋に行きたいんだけど。
不本意ながら僕以外にナントカって言う奴とカントカって言う奴がいる。
名前を覚える気は残念ながら全くないんだけど。

裸の女が恥じる事なく布団を体に巻きつけて僕を見ている。
ベッドの上に女とナントカカントカがいる。

「名前で呼ばれるのは好きじゃない」
「じゃあ、苗字なんだっけ」
「…リドル」
「リドル。ドリルみたいだねぇ」
ふぅ、と彼女が一息つくとそこら辺に置いてあったシャツを掴んだ。

「…もう少し恥ずかしがったらどうなの」
「恥ずかしがってたらいつまでも裸だ」
目の前で何事も無く彼女が下着を着けて着替え始める。
ナントカカントカはベッドでぐっすりくたばってるみたいだ。

「…驚いた。彼に恋人がいるなんて」
彼女がぶらぶらとネクタイを首にかけた。結ぶ気はないらしい。
そして僕に微笑むと手を差し出した。

「恋人?まさか。名前も知らないや」
彼女の手には金貨がいくつか乗っている。

「彼は名乗らなかったの?」
「名乗ってた。でも忘れた」
ローブを引っつかんで彼女が扉へと向かう。

「じゃあね、リドル」
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