□きつねのよめいり
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窓の外は目が眩む程の晴天だった。

「見て、レギュ、空を見て」
細い指が僕の衣服に触れる。
高い可愛らしい声で彼女が僕を呼んだ。

「あんなに晴れてるのに雨が降ってる」
窓の外の水色を仰ぐ小さな手を包みこんだ。
不思議そうに首を少しだけ傾げた彼女は微笑む。
微笑んであのね、と言葉を続けるんだ。

「知ってる?日本じゃこういうの、キツネの嫁入りって言うのよ」
捕らえた手を引くと彼女はいとも簡単に僕の胸に収まる。
くすくすとまだ笑い続ける彼女の髪を撫でながら頷いた。
知ってる、そう言うと彼女は目を丸くして呟く。物知りなのね、だって。

「覚えてないかな。君が前に教えてくれたんだけど」
「え、私が?…うーん…覚えてないなぁ…」
顔をしかめて思考に耽る彼女の肩を抱きながら窓に背を向ける。

「覚えてないなら別に良いんだよ。思い出さなくたって」
黒い瞳に僕が映ってる。
これで良い。他の物なんて何も見えなくても。

「レギュは変ね。そんな事誰も言ってくれない。皆思い出せって」
優しいのね、そう言って微笑む彼女は可愛い。愛らしい。

忘れてくれてた方が好都合だから。
自分の事しか考えてないのに。

既に彼女は別の話題を口にしてる。
僕に肩を抱かれたまま振り払う事無く、拒絶する事もなく。

(もう離れる事がないのなら、)
別に記憶なんて必要がないんだ。
 

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