無
□空から、
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夜、天文台に来た。
消灯時間は過ぎてる。
寮を抜け出したのがばれたらまずいだろう。
だけど、天文台に来た。
眠れなかったから。
下を見ても遠すぎて分からない。
本当に下があるのかも分からない。
「…飛び降りたら、」
独り言を呟く。
続きの言葉は無い。
誰も聞いてなんて、無い。
―…飛び降りたら、楽になれるだろうか?
もう全部面倒なんだ。
思い悩むのには疲れた。
誰も気づいてくれない。
こんなに悩んでるのに。
こんなに頑張ってるのに。
父や母に気遣うのも疲れた。
兄さんがいつか戻るんじゃないかと希望を抱く事にも。
あの人に仕えて言う事を聞くのだってもう楽しくない。
疲れた、疲れた。
―…死にたい。
死んでしまえれば、
(きっと楽に、だなんて)