□欲望
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「何か欲しいものはないの?」
彼がそう言ったのは12月31日。
彼が神に祝福され生まれた一年の終わりの日です。
誰からもらったのかは知りませんがたくさんの箱を抱えています。
私が渡した花束もたくさんの箱の上に乗っかっていました。
自分が生まれた日なのだからもっと喜んでもいいはずなのに。
彼はとても不機嫌そうに私を見ていました。

確かに彼は孤児院で過ごして、ご両親とは会った事が無いそうですが…。
それなのに喜んでも、だなんて考えはとても浅はかですね。
自分の思考を恥じながらトムと向き直りました。

「…欲しいものですか?」
こくりと彼が頷きました。箱の向こうで少し顔が隠れていますが。
それはそうと彼の問いかけには困ってしまいます。
私に欲しいものなんて。どんなに考えても思いつきません。
でも彼は答えを知りたがって私に問いかけているのです。
何もない、ではとても失礼にあたるんでしょう。

「少し待ってください。もし宜しいのなら3日程待てば答えも出るやもしれません」
「そんなに考えるくらいなら別にいいよ。君って馬鹿だよね」
むっつりと彼がそういいました。
馬鹿だなんて罵り言葉を私に言うということは私はきっと彼をとても傷つけてしまったんでしょう。
もしかしたら私のプレゼントの花束の花が気に入らないのかもしれません。
美しい花を選んだつもりでしたけど彼は花が嫌いなのかもしれませんね。
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