無
□夢
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「貴方に死んでも欲しいものなんて無いんでしょう」
馴れ馴れしく口を利くのは自分の部下だった女だ。
酷く生意気で、それでも命乞いをせず凛としていた。
お前にはあるのかと聞けば彼女はやっぱり真っ直ぐこちらを見ていた。
「貴方が欲しかった」
だから、と声が震える。
伏せられた瞳と俯く頭。
「殺されたって構わないの」
泣きそうな声だった。
涙を拭うのがわかった。
気づかないふりをして傍にいた部下に命令をする。
程なくして一人きりになった。
夢。
夢のまた夢
叶わないものだから
近づかないで
怖いものを近づけないで
さて、恐れているのは誰だろう?