□帝王に愛を伝えにゆく
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振り返ると何が嬉しいのか分からないけどにっこにこ笑ってるブラックが。
男にしては長いライトブラウンの髪を女みたいに結んでる。
ネクタイはだらしなく適当に胸元で重なってるだけだ。

「…ブラック」
そう呟くと元々笑っていたはずの彼の表情は一段と緩む、緩む。
これでもかと言うほどゆっるゆるの笑顔ではい、と頷くブラック。
何が用かと僕が問いかける前にあのですね、と彼は口を開いた。

「今日、誕生日だって聞いて!おめでとうございます!You are loved!」
何を興奮しているのか分からないけれど大きな声で素早くそう言うと彼は白い箱を押し付けてきた。
美味しいですよ!ほっぺ落ちるくらい!と言ってくる辺り多分食べ物なんだろう。
受け取る際にぶちょ、と嫌な音がしたのは聞こえなかった事にしよう。

「…ありが」
「それを選ぶ時ドゥルーエラと一緒だったんですけどあいつすっごい真剣な顔で!それがまた可愛いのなんのって話になるんですけどドゥルーエラってもう可愛すぎますよね。犯罪なんじゃないかってくらい。だってあの目!瞳!おっきくてぐりぐりしてるんですよねぇ、可愛いっていうか何ていうか…もう宝石より美しいんですよね!あの瞳に敵う宝石なんてないですよ、石ですよ、石。ドゥルーエラと並んだら宝石なんてその辺にある石と何も変わりませんからね!」
「うん、聞く気ないみたいだね」
「え?何が?ドゥルーエラの話?」

感謝の気持ちと言葉は宇宙のかなたに飛んで行ったんじゃないだろうか。
取りにいく気は微塵もない。そのまま宇宙の塵になってしまえ。
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