中編
□D
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「これで本当に菊花に会えなくなる。寂しいな、本当だよ」
ぼうっと空を見つめる彼は本当に寂しそう。
「そう。それはどうもありがとう」
だけど慰める事なんてしない。方法がわからない。
「ねぇ、お願いがあるの」
彼はさっきよりも幾分か嬉しそうに私に問いかけてくる。
「男爵に会いたいの。何処にいるか分かる?」
むっとした表情を彼がするのを見ながらも答えを待った。
「彼に何か用事があるの?自分を殺した奴に?」
質問を質問で返すなんて。
少し呆れるのを自分で感じつつ彼に頷いて見せた。
「何処にいるか分からないならいいわ。ごきげんよう」
私はそう言って彼に背を向けた。
待って、と彼がいうのは分かってたから。
「多分、多分だよ。確信は無いけど思い当たるところならあるから」
付いてきて、と彼は言う。
最初からそう言えばよかったのに。
「ありがとう、トム」