短編
□トランプ!
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意識している訳ではない。きっとあちらもだろう。
けれど、同じ寮という理由からだろうか。
レイラとは顔をよく合わせた。いつも違う男といる。
そして何故か彼女は毎回僕と顔を合わせると僕を呼んだ。
そしてくだらない話をする。意味が分からない。
もしかして。もしかしたら。
彼女が僕を呼ぶのは助けてくれという意味かもしれない。
と思ったのは随分前で違う事がはっきりと分かったのも随分前。
本当にお金をくれるなら誰にだってついていくらしい。
全く意味が分からない。のに、今日も呼ばれる。
7年生のよく知らない男を隣に連れたレイラがいた。
「あ、リドル」
男から逃げるように彼女がこっちへと来た。
そして声をひそめて僕へと話しかける。
「ねぇ、あの人しつこいの。どうにかならないかな?」
「お金くれるなら誰だって良いんじゃなかったの」
「良いけど。違う。あの人私の恋人気取りで」
困った、と彼女が肩をすくめる。
あの人と名前も呼ばれない彼は恨めしそうにこっちを見てた。
「めんどくさいんだよね。どうしようかな」
「自分のせいでしょ。頑張って」
「助けてくれないの。優等生くんなのに」
業を煮やしたであろう男が近づいて彼女の腕を取った。
もういいから早くいこう、ということなんだろう。
レイラが顔をしかめるのを確かに見た。
「悪いんだけど、」