短編

□血
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「ぶらざ」
くすくすと笑う整った顔。
ああ、一々むかつく奴だ。本当に寒気がする。死んで欲しい。
良いから英語ときちんと教えて欲しい。
今だって復唱したこの単語の意味が分からない。
さっさと教えろ、という意味で彼を睨んだ。
未だに彼はくすくすと面白そうに笑って私を見る。

「お兄ちゃんって意味なんだけど」
死ねば良い。本当に目障りだ。
君は発音が下手だね、とトムが言う。

父は蛇語しか話せなかった。
母はどうだったか知らないけど幼い頃に死んだ。
英語に触れる事なんてほとんどなかったし覚える気もなかった。
学校に来てこうも不便だなんて。思いもしなかった。

幸か不幸か、学校には私と同じく蛇語を話せる人間が居た。
それがトム・リドルという腹の立つ男だったが。
しかも勉強になってるんだかなってないんだか。
何がお兄ちゃんだ。そんなもん日常的に使うわけないだろう。
私に兄妹なんていないんだから。従兄ならいるけれど。…目の前に。

「死ね、消えろ、目障りだ」

お願いだからこの体に流れる血で縛り付けないで。
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