短編

□蛇
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眠ってるリドルの顔に落書きでもしようかと思った。
そしたら彼が顔を赤くして辛そうにしているのが分かった。

…熱、あるのかしら。
風邪でも引いたのかな。

仕方ないのでアブラを呼ぼう。
人の風邪の手当てなんて分からないもの。

…あ、でも、アブラの呼び方も分からないわ。
私が何とかしてあげるしかないのね。

本当にいつまでも手のかかるリドル坊やだわ…。
…何食べさせれば良いのかしら?

とりあえず私用の鶏肉を茹でてあげよう。
食べなかったら無理矢理口に詰めればいいもの。

ぼうっとしながら熱を出す闇の帝王だなんて、と笑った。
きっと傍に居るのが私じゃなかったら無理しても立ってるんだろうな。

弱い所を見せてくれるのは彼が私を信用してくれてるから…。
私はいつまで彼の傍にいるんだろう?

「口から食べられないなら鼻から突っ込んであげる」
「蛇じゃないんだから食べれないよ」
「蛇だって鼻から食べたりしないわ」

茹でた鶏肉をぶらぶらリドルの目の前で揺らす。
彼の潤んだ茶色の瞳が追っていたけどやがてふせられた。

「ナギニ、出て行ってくれないか。一人にして欲しい」
「何よ、今まで私を無理矢理一緒に連れてたくせに」
「ああ、愚痴なら後で聞くから。具合が悪いんだ」
出てって、と再び彼が言った。
茹でた鶏肉に口をつけながら仕方なく頷く。
裂けた鶏肉を彼の傍に置いて、もう一塊は食べよう。

リドルも風邪を引くのね。
普通の人間みたいだわ。

「…さて、どうしたものか」
「貴方が来てくれて助かるわ、アブラ」
「ああ、ナギニ、君が人になったのに私は驚いているよ」
「そうでしょう。当事者の私だってびっくりしてるもの」
「そうだろうね、それからアブラっていつも君はそう呼んでたのかい?」
「ええ、貴方は蛇の言葉が分からなかったでしょうけど」
アブラが来た。
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