短編

□蛇
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初めて彼が人を傷つけた時。
ひどく息を荒くして私にすがり付いて。
とてもとても泣きそうなひどい変な顔をしてた。
多分彼自身気づいてない。私だけが知ってる。

その時、ああ、ずっと一緒に居ようと思ったの。
誰よりも臆病で不器用で馬鹿な彼の傍にずっと。

「人の姿になって分かった事があるわ」
「そう、それは素敵だね。何を分かったと?」
ふぅ、と一息ついた彼が特に興味なさげに呟いた。

「人って暇なんだわ。だから貴方みたいに奇行に走る人がいる事が分かった」
「君は失礼だね。早く蛇のナギニに戻って欲しいよ」
「リドル、いい事教えてあげる。蛇は共食いをするのよ」
「そう、じゃあ可愛い僕のナギニ、人も蛇を食べる事があるんだよ」
「蛇だって人を食べるわ。お互い様ね」

だんだん何の話をしているんか分からなくなってきた。
蛇だった時は寝て食べての繰り返しだったのに。
人になると寝るのも食べるのもすぐに終わってしまう。
暇な時間が出来る。とりあえず体を丸めてじっとリドルを見つめてた。
ちらりと私を見たリドルが笑う。緊張でもしているのか、と。

「違う。よく分からないけど違う」
「そう、眠ったらどうだい」
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