短編

□蛇
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「レイラ、レイラレイラ!素敵な名前だわ」
うるさいよ、と彼から人間の言葉で注意をもらう。
人の言葉が分かるなんて不思議だわ。変な気分。

「ああ、やっぱり外は気持ちが良いわ」
そう言いながらリドルの腕にしがみついた。
少し嫌そうに彼は顔をしかめているが放って置こう。

「貴方、顔だけは良いのに性格で随分損をしているでしょうね」
「ナギニ、あまりうるさいと散歩は止めにするよ」
レイラだと今しがた名付けたのは彼なのに。
呼んでもらえないことに少し良い気分がそがれた。
騒がしい街中に駆り出された彼が不機嫌なのは分かるけど。

「蛇の時の方が可愛かったよ。どんな憎まれ口叩いても」
「それはリドルは蛇が好きだからよ。人を好きになりなさいな」
ふ、と彼が足を止めた。
周りがうるさい中で彼が首をふるふると静かに横に振った。

「嫌いになった?」
「いつもくだらないと思ってるわ」
歩き始める気配のない彼の腕を取った。

「人のする事なんていつもくだらないわ。貴方だって知ってるでしょう?」
リドルは答えない。私に引っ張られるがまま。

「それでも君はずっと一緒にいてくれる」
「貴方が私に優しくてご飯をくれるからよ」
するりと彼の腕を放した。
アイス屋の前で私は立ち止まっている。

「アイスを食べて帰りましょうか」
闇の帝王だなんて笑っちゃう。
そしてそんな彼が私の前ではただの人だなんて。
面白いを通り越して虚しささえ感じる。

人の目線に立つってこういう事なのか。
いつもの様にリドルの首元に抱きつくと、重いから退けてって言われた。
何だ、人として接すると冷たいなんて。小さな男ね。
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