短編
□でんぱっぱ
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目が覚めたらまだあの女の子がいた。
と言うか僕をじっと見つめてすぐ傍にいる。
どうしよう。もう意識ははっきりしてる。
けれど起き上がれない。怖い。もうどうしよう。
寝たふりを決め込んでいると彼女は口を開いた。
「起きたか」
あああ、何だこれ。独り言なんだろうか。
何も返さずに僕が黙っていると彼女は言葉を続ける。
「それにしても、何だ、その、君は可愛いな」
いきなりそんな事を言われても困るんだが。
そして可愛いって何だ。男の僕に。
というか彼女は一晩中ベッドのすぐ傍で僕を見張っていたんだろうか。
怖い。怖すぎる。ストーカーだ。そして彼女は誰なんだろう。
「今更で悪いんだが君はその、女だよね?」
男だよ、とすかさず答えてしまった。寝たふりをしてたのに。
ええ、と驚く彼女を他所に上半身を起こした。
「何だ、男、男だったのか…ほう、最初から男だったと…何てことだ…」
ぶつぶつと何か呟ている彼女はもう放って置こう。
ベッドから降りて靴を履いて立ち上がる。
目が覚めてしまった。朝食の席にでもつこうか。
「着替えるんだけど」
「着替えたら良いじゃないか」
じっと僕を見つめたその子が言う。
何か問題でもあるのか、と言いたそうな顔だ。
君が問題なんだよ。その存在が。とは口にせず朝食の事でも考える事にした。