照らす太陽

□22枚目
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ディクターside

初めて彼が来た時、俺は期待していなかった
彼もきっと、妹の方を大事にすると思ったから
幼くても、兄の贔屓目があったとしても
それでも妹は可愛かったから
だからきっと彼もフェリチータに夢中になる

ル「初めまして、坊ちゃま」
『・・・だれ?』

だからあの時俺は逃げた
皆が困るとわかっていても、こっそり館の外に出て
庭で一人でシエスタをしていたんだ

突然体を揺すられて
怒られると思って目を開けられなかった俺の耳に、優しい声が聞こえたんだ

ル「ルカ、と申します。
今日から坊ちゃまとお嬢様のお世話係をする事になりました」
『どうして・・・?』
ル「お嬢様が、坊ちゃまはよくここに居らっしゃると教えてくれました。
さあ、戻りましょう?」

どうしてここが分かったの?
言葉が途中で切れたのに、ルカはちゃんとわかってくれた
手をつないで立たせてくれて
寝起きでふらつく俺の体を抱き上げてくれた
揺れる巻き毛から甘い香りがして
どうしようもなく安心したんだ

『ディク』
ル「はい?」
『ディクってよんで』
ル「え、ですが・・・」
『オレがいいっていうんだからいいの!』

無理矢理約束させて
フェルはお嬢様って呼ばれてるけど、俺は名前で呼んでもらえて
少しだけ、フェルよりルカに近くなった気がしていた

だけどルカは、フェルと一緒に居なくなった
ルカは優しいから、言えばきっと俺と一緒に居てくれた
だから言えなかった
本当は、叫びたいほどに

さびしいよ
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