辺りが暗闇に静まりかえった午前0時


満開に咲いた桜が
闇に溶けた見えない風にそよそよと揺らされ、


薄紅色だった桜が闇の黒により浮き出て

淡く色濃くなった花びらは一枚、

また一枚と散らしていく


ふと、

雲に隠れていた月がゆっくりと顔を出す

月は紅く、辺りを照らす
照らされた桜は、より紅く輝く


「随分と…――――小さくなったわね」
少女は月を見上げている

そして、アナタは…―――
コツンと桜にもたれた

「紅くなったわね」


アナタ達だけは変わらないと思ってたのに

ブァア、
「!…―――」

桜の花びらは闇へと散りだす

紅い月に紅い花びらが暗闇の中で舞う


…―――願うこの身よ、燃えて月までも、

あぁ、魂まで滅びてしまえばいいのにと

「…――そうね、この景色はずっと変わらないわね」

…―――呪うこの身は、老いることもなく、

あぁ、絶望さえ感じるはずなどないほどに

「千年経った今でも……。お土産よ、これは沈丁花…」

…―――もうわたしは、夢を見ることも、

あぁ、子守歌も忘れてしまって聴こえない

「…――じゃあね、また来るから」

…―――願うこの身は、燃えても生きろと、

あぁ、魂まで滅びることなどないように







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