×平和島静雄

□七夕の願い事
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「…オイ。」
自室に戻るなり、静雄は低く呟いた。
一瞬で、眉を潜める彼の視線の先にいたのは…。
「やっ☆シズちゃん。」
黒いファーコートに身を包んだ青年―折原臨也だった。
「手前、何してやがる。」
「何って、見てわからない?」
余裕たっぷりの態度で返され、静雄は思わず溜め息をつく。
「俺が言ってンのはなぁ…。」
――なんで人の家で、勝手に寛いでるのかって事だっつーの。
臨也は、普段は聡いくせに自分の前では、えらく子供っぽいという事に、静雄は最近気づいた。
それを知った時は、信頼されているようで嬉しかったが、今は呆れてしまう。
そもそも、彼は新宿に居たのではないか。
なのに、わざわざ平日にどうして自分の家に居るのだろう。
すると、臨也はクスリと笑みを漏らした。
「シズちゃん、今日が何の日か…分かってないでしょ?」
「は?」
突然の質問に、静雄は首を傾げた。
臨也の笑みが、さらに深くなる。
「その様子じゃ、忘れてるみたいだね。じゃあ、今日は何日か分かる?」
――何日って…。
「7月7日だろ。って、あ。」静雄は、臨也の言わんとしている事を理解し、小さく声を上げた。
「七夕か。」
「ピンポーン。大正解。」
にっこりと微笑むと臨也は、懐からある物を取り出す。
――何だ?
「だからね…。」


「願い事、書いて貰おうと思って。」


そう言って取り出したのは、長方形の小さな短冊だった。

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