アイの翼
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「ったく…面倒臭ぇ。何で十刃のこの俺が、調査なんぞ命じられんだよ」
悪態を垂れつつ、第六十刃たるグリムジョー・ジャガージャックは辺りを見回し、先程感じられた、あの異常な霊圧を探す。
しかし、鋭敏に神経を張り巡らせ、探査回路を広範囲に張り巡らせていても、先程の霊圧は微塵も感じられない。
「もう死んでんじゃねぇのか?あの霊圧の持ち主」
とはいえ、当の主たる藍染からは「何かを見つけたら、それが生きていても死んでいても連れ帰るように」という命令を下されている為、手ぶらでは帰れない。
グリムジョーは、チッと一つ舌打ちをすると、響転を駆使し、距離感を見失うほど巨大な虚夜宮の周辺を探り始めた。
「あン?」
すると、城の東側に極小さな霊圧の反応を見つけた。
今にも消えそうな霊圧だったが、先程感じたあの異常な霊圧と同じ性質のものだと分かる。
要するに、同じ霊圧の持ち主だということに他ならなかった。
「割と早く見つかったな。まぁいい、面倒臭ぇのが早く終わるってこった」
不敵な笑みを浮かべながら、グリムジョーは霊圧の感じる場所へと急いだ。
「!」
そこにいたのは、紅藤色の髪を持ち、人形のように整った顔を携えた、奇妙な人間の子供だった。
しかし、更に目を引いたのは、人間の身体に付いているはずのないものが、背中から生えていたのだった。
「翼…?」
左右に黒と白の翼。
妙な霊圧が最も集中して発しているのは、どうやらこの、八枚の翼からのようだ。
「妙なやつだな」
小さな頭を片手で軽々と持ち上げ、その端正な顔を見つめる。
どうやら怪我をしているようで、顔や身体の所々に生々しい傷があった。
「虫の息じゃねぇか。死ぬ寸前だぞコイツ」
グリムジョーは大きく溜め息を吐き、その子供を担ぎ上げた。
見た目よりもずっと軽いその身体に、一抹の恐怖を抱く。
「…チッ。こんなもん、殺しちまってもいいじゃねェか。面倒臭ェこと命じやがって、藍染の野郎」
そう愚痴を零しながらも、グリムジョーは藍染の命に従い、その奇妙な人間の子供を連れ帰る為、足早に虚夜宮への帰路へついたのだった。
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