アイの翼

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永遠と続く夜。生物の気配の一つも感じさせない、砂塵舞う大地。
正に死の世界、虚園。
その王たる者となった死神・藍染惣右介は、部下である死神・東仙要の淹れた紅茶の香りを楽しみながら、朝のゆったりとした時間を過ごしていた。
朝とはいっても擬似的で、昼夜のある世界での朝という時間帯というものであり、この永遠の夜の世界の風景からは、実感の湧きづらいものである。

「今朝も良い香りだよ、要。君は紅茶を淹れるのが上手いね」

「そう言っていただけると、嬉しい限りです。藍染様」

他愛もない会話を交わす二人。
しかし、その悠々とした時も、一瞬にして緊張感に満ちた雰囲気へと変わる。
今までに感じたことのない、些か特殊な性質かつ、その重圧で膝を屈してしまいそうになるほどに強大な霊圧を、その身に感じたのだ。

「ッ、これは…」

藍染は、苦しげに眉間に皺を寄せる。
紅茶を持つ手は震え、カップを落としてしまった。

「藍染、様…ッ、この、霊圧、は…!」

耐えきれずに、その場に伏す東仙。
自らの内にも強大な霊圧を有する藍染の顔にも、冷や汗が浮かんでいた。

「ぐっ…!」

咄嗟に藍染は、机に上体を伏せた。
その瞬間、飲まれそうなほどに強大で異常な霊圧は、潮が引くように搔き消え、何も感じなくなった。

「…何だ、今のは」

一瞬の急激な変化に、困惑する藍染だったが、すぐに冷静沈着に、状況を判断する為思考を巡らせる。

「ハァ、ハァ…藍染、様…」

「要、動けるか」

「ハイ…息を、整えました」

先程まで、重圧により苦悶の表情を浮かべながら地に伏していた東仙は、息を荒げつつも、体を起き上がらせる。

「先程の異常な霊圧…そうだな、グリムジョー辺りに調査を命じよう。要、呼んできてくれるかい?」

「かしこまりました、藍染様」

息を整えた東仙は、少々体を引きずりながら、一礼をしてその場を後にした。
東仙を見送った藍染は、未だ霊圧の名残を感じている身体を、重々しく持ち上げ、窓辺に立った。

「さて、鬼が出るか蛇が出るか…鬼、というものがいればの話だが」


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