黄金の生命-イノチ-

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同時刻、冬木市ハイアットホテルにて、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトも、この冬木市に起こった異変に気付いていた。
大源的な力の流れ、マナの流れが妙な動きをしている。
人為的なものというには、あまりにも現象を操り過ぎてはいるが、自然的というには不自然だ。

(まるで、この世のものではない、外界からの干渉のような…)

外界からの干渉。
“この宇宙”より外側からの、前振りの無い干渉。
確証はないが、稀代の魔術師たるケイネスには、そうとしか思えなかった。

(聖杯の影響、誤作動か?いや、それならば、教会からの通達があるはずだ。
…ということは、これは聖杯戦争とは関わりのない異変だということだ)

それ即ち、聖杯を寄る辺としない力によって、外宇宙から干渉を受けているということに相違ないのだ。

(これは、魔術師の悲願たる“根源”へ至る為の、何らかのマテリアルになる可能性もある…調べない訳にはいくまい)

きっと、この聖杯戦争に参加する魔術師ならば、この異変に気がついているはずだ。
そして、もしケイネスと同じ予測を立てている者がいるとするならば、調査へを赴くに違いない。
このまま座しているのでは、大いなる可能性を見つけ出すことを、容易く出し抜かれてしまうだろう。

「ランサー」

ケイネスは、自身が契約をしたランサーのサーヴァント、ケルト神話におけるフィオナ騎士団随一の騎士たりディルムッド・オディナを呼び出した。
霊体化していたディルムッドは、直様実体化し姿を見せた。

「はっ、我が主よ。ここに」

自らの前に傅くディルムッドを見下ろし、ケイネスは口を開いた。

「ランサー、お前も気付いているだろう。この異様なマナの流れに」

「はい。何やら、大いなる力の干渉を感じます」

「そうだ。そしてこの流れの先は、彼の霊地・円蔵山に向かっている。
ランサーよ、この使い魔と共に調査を命じよう」

「は…」

ケイネスは、自身の魔術礼装にて生成した水銀の塊を、ディルムッドに差し出した。

「この異変、教会をも把握し兼ねていると見た。そして、この聖杯戦争において、イレギュラーな事態。
我が勝利を脅かす要素は、早急に排除せねばならん。しかしその前に、調査が必要だと判断した」

「…拝命致します、我が主よ」

「それで良い。
ああ、そうだ。他の魔術師共も、この異変に気付いているものも多いだろう。
よって、使い魔…もしくは、私と同じようにサーヴァントを差し向けている者もいるはず。
他のサーヴァントと鉢合わせた際は…」

「承知致しております。その際は、この槍を以って打ち果たしてみせましょう」

「……では行け、ランサー」

「はっ」

ケイネスは、暗雲立ち込める夜空を見た。

(この聖杯戦争、何やら予想外のことが起こるやもしれんな…だが、この私の戦歴を、そのようなことで傷付けさせはしない)


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