アイの翼
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「さて、君達に集まって貰ったのは他でもない。先程皆も感じたであろう、あの異常性の高い霊圧を保持する者のことだ」
調査に赴いているグリムジョーを除く、九人の十刃達に、張り詰めた空気が漂った。
招集を掛けた張本人である藍染からは、普段の悠々自適な空気感は感じられず、緊迫した面持ちで十刃達を見渡した。
「あの霊圧は、一体なんだったのだ。我々でも感じたことのない、強大さであったぞ」
緊迫しは空気の中、最初に声を発したのは、第二十刃のバラガン・ルイゼンバーンだった。
流石虚園のかつての王というべきか、緊迫した表情ではあるものの、その声と態度には落ち着きを孕んでいた。
「今、グリムジョーが調査を行なっている。ああ、だが…それも終わったようだ」
そう藍染が呟いた瞬間であった。
重々しく開く扉の音が室内に響き渡り、“土産”を手にしたグリムジョーが姿を現した。
「おかえり、グリムジョー」
「アンタの言いつけ通り、連れ帰ってやったぜ。おらよ!」
グリムジョーは、その“土産”を無造作に床に投げた。
藍染は、冷や汗すら感じた強大な霊圧の保持者たる者の、その予想外の姿に、目を細める。
「ほう。その痩せた子供が、彼の霊圧の持ち主だと?」
「ああ、死にかけてるけどなァ。まず間違いねェよ。感じんだろ?アンタも」
そう言われ、子供から発せられるか細い霊圧を読む。
そして、不敵で意味深に、藍染はほくそ笑んだ。
「なるほど、確かに…その子供から発している霊圧は、先程のもののようだね。些か、信じられないほどに微々たるものだが」
藍染は席を立ち、ゆったりとした歩調で、気を失っている毛色の変わった子供へ近づいていき、その肢体をじっくりと観察する。
一通り眺めると、藍染は膝をつき、力無く横たわる子供に手を伸ばす。そして、上体をそっと起こした。
「藍染様」
すると、第4十刃であるウルキオラ・シファーが、藍染の後方へと立つ。
「藍染様。そう易々と得体の知れないものに触れては、危険です」
忠実なる配下であるウルキオラは、見知らぬ子供への警戒は人一倍らしい。
その手は、自らの斬魄刀へと手が伸びていた。
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