捧げ物・頂き物
□腹ペコ恋愛記
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「腹が減っては戦は出来ぬ。」とはよく言うけれど、俺はこうして森の中で倒れている今、その通りだと思った。
いざ自分がそこうなると、人間はこういった名言を本当に信じる気になるものらしい。
俺は、
餓死寸前の間抜けな忍びの『忍』だ。
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ことが起こったのは三日前。
俺は、とある国の有能な忍隊の長だった。そして、主にとある任を与えられ、その目的地へ急いでいる所だった。
俺は忍びとしての術や能力は、自分で言うのもなんだが結構な腕前だ。しかし、一つだけ欠点があった。それは…
極 度 の 大 喰 ら い !
しかもかなりの燃費の悪さで、すぐに腹が減ってしまう。影の世界に生きる忍びにとっては、物凄い欠点だ。
そして、移動中の事だった。その“燃費の悪さ”が災いし、こうして森の中で餓死寸前の状態で倒れていると言う訳だ。
「あー…誰か…俺に、食いもん…」
と言っても、かなり深い森の中だから、人なぞいるはずも無い。俺は、ここで餓死する覚悟を決めた。
あー…忍び…忍びが餓死であの世行きか…
もう、羞恥を感じることもできないくらいに、力が無かった。
「おや…こんな所に人が…」
「…っ!!」
人の声がした。低く、何となく甘ったるい男の声だ。
目線を少し上げてみると、口を覆い銀色の髪の、僧侶らしい格好をした奴だった。
「如何しましたか?お腹でも空いているのですか?まぁ、こんな所で無傷で倒れていると言うことは餓死寸前なんでしょうが」
ご、ごもっとも…
「全く…貴方忍びでしょう。なんと言う間抜けな…ククッ」
男は面白そうに笑った。完全に、俺の事を馬鹿にしている笑いだ。
「………」
俺は怒りを覚えつつも、一応は神の救いだと思い、黙って男を見つめた。
「ふぅ…まぁ、見つけてしまったのも仏の思し召し…来なさい。何か食べさせて上げます」
おぉ…っ、おぉ…っ!こいつ、口悪いけどイイ奴…!
俺は涙が出そうになるのを堪えながら、男の馬に乗せて貰った。
「そ、そういやアンタ…名前…」
「ふふっ。私は…天海といいます」
ふーん…天海ね…あれ?何処かで聞いたことあるような…
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