捧げ物・頂き物
□天気と2人
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ここ、親方様こと武田信玄様の治める甲斐の国の城。俺、夏流は真田様を守る忍の猿飛佐助さんの部下だ。
だけどまだ下っぱの方。
自分で言うのも虚しいけどね。
苦無(クナイ)さばきも手裏剣さばきも下手くそ。
そのため、俺の日課は
サァァァァァ…
『っ!』
トトンッ!
『はぁ……。葉に刺さった苦無は二本だけか……。』
それは、風で落ちてきた葉に苦無を貫かせること。
今は13枚中2枚だけだ。
佐助さんなら全枚貫くんだろうなぁ……。
佐助さんは俺の憧れだ。
カッコいいし、お茶目な所があるけどしっかりしてるし……たまにオカンだけど……。
それに俺は佐助さんが好きだ。それは尊敬の意味でも、恋愛の意味でも。
男同士なのに何で好きになったんだろうって思って諦めようとしたけど、無理だった。
ドキドキが止まんなくて。
『やべっ……///何考えてんだ俺///』
早く帰んないと、心配かけちゃう。
この修行は秘密だし、バレないように。
「佐助ぇぇぇぇっ!!甘味が無くなったぞぉぉっ!!」
「あーはいはい。ったく、消費が早いんだから。」
『佐助さん。甘味です。』
「気が利くね。ありがとう夏流ちゃん。」
『いえっ。では失礼いたします。』
「うん。」
「甘味ぃぃぃっ!むぐむぐ……。」
「ったく。旦那、もう少し大人しく食べてよ。」
そんな2人の様子を影で見る夏流。
やっぱり真田様と佐助さんは仲良いなぁ……。
羨ましい。
主従関係とはいえ、あんな風に親しいのを見るとやはり憧れる。
『はぁ……。俺には程遠い……。』
クゥーン……
『ん?あ、子犬。迷子になっちゃったのかなぁ。』
夏流は、少ししゃがんで子犬に手を招く。
『おいで。俺が母さんの所へ連れてくよ。』
タッ…
『あっ!!待って!!』
子犬は警戒していたのか、じりじり寄ってきた夏流から逃げようと走って行ってしまった。
その後を追う夏流。そこはやはり忍なだけあって早い。
『(下手に走り回って猪とかの罠にはまんないように急がなきゃ!)』
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