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□寡黙心中、
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取り巻きの中にその女はいない。
キラキラする女達とは違う、良く言えばしとやかな、悪く言えば地味なそいつは匂い立つ何かを持っている。
少し離れた場所に座る女はいつもと同じ様に本を見つめる。
そして、俺の視線に気付けば少し口角をあげるのだ。
ムカつく女。
アイツは全て、わかっている。
黒い髪、黒い瞳、白い肌。そして朱くチラ付くくちびる。
その全てで挑発してくるんだ。
本を見つめる睫毛が映画のワンシーンのように見えて思わず目を逸らす。
アイツはそれこそ、アプロディーテーのようで雰囲気美人そのものだった。
「ジョー?」
取り巻きの女達が気づいたら面白くないだろう。
「なんでもない。」
平気だ。
誰もアイツをライバルだと思っていないし眼中にないだろう。
だからこそ。
ムカつく女なんだ。
俺はアイツを許さない。
シーツの上で踊るお前なんか知りたくなかった。
そのまま花びらに埋もれていればよかったんだ。
それなのに俺は、また、アイツを踊らせてしまう。
きっと、今日も、アイツは言うんだ。
『ギブソン君の事、一生憎んであげる。』
一生憎むのは俺のほうだ。お前なんか、知りたくなかった。
寡黙心中、
幻想BOX様のJr.に触発されて。貰って頂きました。