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□こころをとめて、きおくをとめて
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夏は嫌い。
暑くて、怠くて、なにもする気が起きない。
でも、彼との夏が好きだった。
彼は私なんて殆どかまってくれなかった。
毎日野球ばかりで、付き合っている実感なんてまったくなかった。
それでも白球を追い掛ける彼は私には眩しすぎて、悔しいけど好きだった。
彼は、私に言った。
今は野球が1番。君はその次。
怒らなかった自分を褒めてあげたい。
それくらい私も理解していたし、がんばっている彼には言えなかった。
大人になるのは辛いこと。
泣きたい夜に独りなのは辛いこと。
悪いのは私。
それだけで満足していればきっと。
向こうに映る彼を見て後悔するのはいつも夏。
今でも夏は嫌い。
でも、彼は好き。
こころをとめて