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□やさしくむしゃむしゃおいしくたべて
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「問題でーす。私は今何を考えていたでしょーうか?」


突拍子もないことをニコニコ話すこの女は実にウザいと思う。

「知るかボケ。」

「ブッブー!不正解です。」

無視かよ!


ただでさえ練習で疲れてるのにそのうえコイツのお守りなんて。

俺のイラつきなんてこの女はまるでお構い無しだ。

「もうしょうがないですねー。以心伝心は恋人の鉄則ですよ。はいもう一回。」

どうぞ。と答えを求めてくるがちょっと待て。


「お前いつから彼女になったんだよ。」



寝言は寝て言えとばかりに言ってやると、女がキョトンとした。

「あぁそうでしたね!まだ付き合っていませんでした。」

あはは、と。
アッサリと言い切った女は本当にバカだと思う。

「じゃあ以心伝心は出来ないので今回はここまで!ありがとうございましたー!」

「って自己完結してんじゃねぇ!」

声を荒げれば女は満足そうに笑う。
コイツ狙ってやがったな。

「答え、知りたいですか?」

さっきよりも落ち着いた女の態度に俺の眉間のシワは更に深く刻まれる。

答えなんかはどうでもいい。さらっと告白まがいの事をしておいてそのまま逃げれると思うなよ。


きっと今の俺の顔は極悪人のようだろう。


「他に言う事があるだろ。」

「答えじゃないんですか?」

困りましたね。と女は溜息をつく。
コイツは俺の神経逆撫でるのが趣味なのか。

立っているにも関わらず貧乏揺すりをし始めた俺に女は言った。


「堺さんのご希望は?」


は?何言ってんだこのアマ。


「今堺さんの中、私でいっぱいでしょう。それが私の希望です。」


好きですよ、と綺麗に笑う女に一瞬心が揺らいだ。



コイツは危険だ。
この3分程度の間に気付いただろコイツの変貌振りに。


「ふざけんなクソアマ!テメーなんか願い下げだバカヤロー。」



大人気ない。
わかっているが今は一刻も早く此処から避難するのが先だ。
この女の毒牙にやられてしまう。


「そうですか。残念ですね。」

嘘つけ!顔が残念がってねぇだろう!

焦る俺とは対象的に楽しそうな女は、じゃあ最後にさっきの答えを教えてあげますね。と俺に近付いて来た。


いや、それもういいから!俺が言葉を発するよりも早く女が囁いた。




「やさしくむしゃむしゃおいしくたべて。」






…今日はコイツにお持ち帰りされよう。








やさしくむしゃむしゃおいしくたべて
 

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