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□相反するアスター
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部屋に入って、いつもと違う匂いを確認して。
薄暗い部屋から君を見付けて抱きしめるんだ。
君は恥ずかしがるけれど、本当は僕のほうが恥ずかしいことは秘密にしよう。
その薄い唇から「おかえり」が零れる前に塞いでしまえ。
そうすれば君はきっと。
体が強張ったのは一瞬だけ。すぐに力が抜け落ちて、君はもう僕のもの。
服の上から撫でる身体は僕のもの。
かわいいなぁ。
その顔も仕草も変わらない。あの頃とちっとも変わらない。
何年か越しの恋を実らせて、初めて君と過ごした時のように、僕の気持ちも変わらない。
君が好きだよ。
優しい言葉。でも僕は優しくない。
君の歪む顔が1番好きだ。
だんだん言葉が消えて、呼吸が荒くなって。
君がその一線を越える寸前で、僕と一つになるんだ。
君は僕のものだから。
薄暗い部屋で目を覚ますと、僕はいつも絶望する。
君が僕のものだったのは、ずっと昔のこと。
今はもう別の誰かのもの。
それなのに。
わかっているのに僕はまだ、夢の中だけでも昔の僕に縋り付く。
こんなことしてはいけない。思い出の中の君を汚してはいけない。
だって、君はもう僕のものではないのだから。
白濁塗れた右手を眺め、今日も僕は後悔する。
相反するアスター