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□寂しいふたつの心空間。
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『寂しい独りの愛し方。』続編。別ヒロイン。











「ワインはもっと、嗜むものだよ。」


ブラインドの隙間から夜を覗く。
お世辞にも綺麗とは言えない夜の色。その狭間に抱える彼女も、美しくない。

「そうさせるのは、君でしょう。」


彼女らしい安物のワイン。
ワイングラスを使わない様も彼女らしいと言えば、彼女らしい。

不機嫌を隠さない彼女の部屋は、いつも夜。

嫌いな部屋の、好きな椅子。
ローチェアーは特等席。

嫌なことも忘れてしまう。


「君はいつも、こんな乱れた生活をしているのかい?」

酔った彼女しか知らない。床に沈む彼女は煙りの様で醜い。

いつも、どこでも。

「私にとってはこれが普通。乱れた、なんて思ってない。」


美しくない彼女の、美しくない日常。

美しくない部屋に不釣り合いなのは、僕とこのローチェアー。


「もう寝るのかい?」


「君が、淋しそうだからね。」


僕はいつだって楽しいさ。
それなのにこんな気持ちになるなんて、全部この部屋が悪い。

「嫌いだよ、君も、この部屋も。」

僕は紳士なんだ。
こんな事したくない。
それでも彼女を見れば、僕の中が醜い何かでいっぱいになる。

「嫌いなのに、セックスできるのね。」

「嫌いだから、だよ。」


嫌いな部屋の、嫌いな彼女。
お気に入りのローチェアー。

狭間の夜はやっぱり陳腐で美しくない。


「君にはフルーレセントがお似合いよ。」


「君ほど美しくない女性はなかなかいないよ。」


美しくない彼女と同じものが見えているなんて信じたくない。
淋しくない彼女は淋しそうな僕が好きなだけ。


僕は、全部嫌い。








寂しいふたつの心空間。

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