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□研ぎ澄まされた世界
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「気になるならチェンジしますよ。」
「…いや、」
このまま帰りたい気持ちと、この女に興味を持ってしまった不快感で上手く言葉が出ない。
「傷痕、評判が良いんですよ。自分で付ける娘も居るくらい。」
想像したら吐き気がした。
なんで、そこまでするんだよ。
「みんな、早く此処から出たいのよ。」
さっきよりもゆっくり、冷たく女が話す。
「お前もか?」
「まさか。
此処に居ても地獄、此処から出ても地獄。」
みんな、早く気付けばいいのにね。
にっこりと笑う女は全てを悟っている。
「…そうだな。」
「ぷ!あ、はははは!」
少しの沈黙の後、女が笑った。
俺には意味がわからない。
「ゴメンゴメン!そう返してきた人初めてだったから…!」
涙を浮かべて笑う女は肩を震わせた。
「みんな、そんなことないって言うのよ。馬鹿みたいに。」
涙を指で拭う姿にただ唖然とする。
コイツ、笑うんだな。なんて当たり前の事を思う。
「ねぇ、時間無くなっちゃうよ。そろそろシようか。」
今日は楽しくできそうだよ。
まだ笑いの収まらない女が頬に触れる。
「…今日は、話そう。もっとお前と話がしたい。」
女はキョトンとした後に、また笑った。
「じゃあ、外の世界を教えてよ。」
シーツに包まる女は、初めて会った時よりも幼く見えた。