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□その唇から紡がれる言葉は
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貴方は敗れた。

いや、元々勝負などしていても最初から結果など分かりきっていた。





限りなく深い闇の奥で誰の声も、何の声も聞かずに

蓋を固く締めて縮こまっていたのは、紛れもない貴方自身だった。






そして私は知っていた。






殻の中で縮こまっている貴方を。


貴方にすべきことも。



でもしなかった。









勝負がついてもまだうわ言のように「殺せ」「殺せ」と言うそれは



もう人でも鯨でもなかった。


人が生んだ欲の塊。とでも言うのだろうか。





哀れ?違う。




惨め?違う。






可哀そう?これも違う。














冷酷な瞳の貴方に対し、もう一人は全く違う瞳をしていた。


館長よりも外見からしてみれば滑稽で不可思議なものだろう。







なのに笑っていた。


仲間の為といい館長に立ち向かっていた。





そして去っていった。



私にとって館長にとっても深く大きな跡を残して。












それと同時にサカマタは館長を担ぎ海へ向かった。

私はその後ろをただついていくだけだった。




貴方達と同じように海には入れないのに。






「……なんだ葉月。伊佐奈を渡せと言うならその話は聞けないぞ」

『違う………ただ最後を見送ろうかと思っただけ』

「…そうか」





『ねぇ……』



「………?」











喉まで出かかった言葉を飲み込み


『何でもない…』



今までで一番下手な嘘をついた。








「人間とはでら面倒だ…」


そう言い残して飛び込んだサカマタ。







広大な海へと遠ざかっていく姿を




瞬きをしないで見つめた。


















水飛沫をあげて暗い底に沈んでいく刹那












貴方の虚ろな瞳はどこか遠くを見据えて









口元には微かに笑みがこぼれていた。


























この時ほど私は自分の存在を恨めしいと思うことはなかった。










最初で最期のその笑顔と言葉は













「愛してる」























《アトガキ》
血反吐が出るほどイライラする仕上がりとなってしまいました……

こうもっと…!なんか綺麗なシリアスが良かったけど
何この不完全燃焼!!それ以前に燃えてねぇ!!!みたいな泣

最後の一本のマッチをこうシュッとやったら

ポキッと折れてしまったかのような



もう嫌!!人生胎内からやり直したい!!

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