★ひな祭りevent★
□Dear (愛しい人)
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「!?」
ポッ。と小さな明かりが灯され、ハヤテの顔が浮かび上がった
ニッとその顔が笑う
「雛祭り!おめでとう!!」
「へ?」
「なんだよ?お祝いじゃないのか?」
ハヤテの手には小さなケーキが乗せられていた
立てられた蝋燭がゆらゆらと揺れる
「あー!消えちまう!!○○○早く消せ!!」
「え?う・・うん」
ふっ。と息を吹きかけると溶けた蝋独特の匂いが部屋に広まった
(あ・・・この感じ・・・)
ランプに明かりが灯され、部屋がオレンジ色に染まる
ケーキを机に置きハヤテが笑いながら○○○を椅子に導く
「ほら!座れって!!」
「これ・・・ハヤテが作ってくれたの?」
少し形の崩れたそれは白い肌にチョコレートで
[dear ○○○]と書かれていた
「ナギ兄に教えて貰った。この間に続いてこれだから散々馬鹿にされたけど」
(バレンタインの事・・・)
小さなケーキを切り分けるとハヤテはそれを○○○の口元へ運ぶ
(えっ!!ハヤテが)
その視線の意味を悟る様にハヤテは眉を寄せる
「なんだよ。何か文句あっか」
「うっ・・・ううん。ない!」
「口開けろ」
言われるままに口をあけると甘いクリームの味が口の中に広がった
「美味しい!!」
「ナギ兄直伝だからな!!」
又ハヤテが嬉しそうに笑う
よし!食おう!!とハヤテがケーキに手を伸ばすと○○○が笑った
「ふふっ。ありがとうハヤテ」
ピタ。とその手が止まる
○○○は続けた
「あのね・・さっき思い出したの。ヤマトのお母さん達とやったひなまつり」
小さなケーキに刺さった数本の蝋燭
誕生日ではないけれど、ケーキに蝋燭を灯してそれを消すのが好きだった
消した後の一瞬の静けさ
蝋燭の煙の匂い
そして、変わりに浮かび上がる家族の笑顔
「嬉しかった。だから、ありがとう」
カタン。とフォークが床に落ちる