☆ソウシ☆
□a master(中編)
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パタン。とソウシの部屋の扉が閉まる
少し薄暗いその部屋は、うっすらソウシの香りがした
買ってきた薬草をストック棚に入れ、すぐに使うものは医務室へ運ぶ
薬草を取り分けながら、○○○は気になっていた事をソウシに聞いた
忙しく、手を動かしながら。
○○○
「ソウシさんのお師匠様って、女の人だったんですね」
ソウシも同じように薬草を終いながら答える
ソウシ
「言った事なかったかな?私が島でたった一人生き残った時、一人の医師が現れた。
それが、師匠だった」
○○○
「それは聞いた事があります。でも、まさか女の人だったとは・・・」
ソウシ
「女性の医者は珍しいからね」
クスリ、とソウシが笑った気がした
○○○
「ソウシさん。お師匠様のお名前って・・・」
先程、挨拶した時には名乗って貰えなかった
ソウシは微笑みながら答えを口にする
ソウシ
「あの人には・・・名前が無いんだ」
○○○
「え?」
ソウシ
「正確に言うと、偽名を使ってる。行きつく先々で思いついた名前を使ってるんだ」
○○○
「なんでそんな事・・・」
ソウシ
「うーん・・・自由な人だから・・・一つの物に縛られたくない、みたいな事言ってたかな・・・私の島に来た時も一人で。世界を自由に回って病気の人達を救いたいって言ってたよ」
○○○
「凄い・・・」
きゅ、と薬草を握りしめ体に力が入る
今まで、そんな逞しい女の人に出会った事があっただろうか?
ガサガサ、と袋を終う音がしたかと思うと、ソウシが立ち上がり扉の方へ歩いた
ソウシ
「さ。じゃあ、それは医務室へ運ぼう」
○○○
「あ・・・はい」
2人は医務室へと移動した
ソウシ
「とりあえず、この上に置いて、明日晴れたら天日干ししようか」
ソウシがそう言うと○○○は元気よく返事をした
薬草が包まれていた布を畳む
ぼんやりと、ソウシの師匠の事を考える
すらりと伸びた手足
高い身長
切れ長の目は、両性的な魅力を醸し出していた
改めて、ソウシの師匠の顔を思い出す
先程会ったばかりだというのに、既にぼんやりとしか思い出せない
緊張してよく顔が見れなかったからだ
○○○
(私の・・・恋人です・・・か・・・)
言われた瞬間、ビリ、と、自分の体に電流が走った気がした
腰に回された手の感触が新しい
心拍数を上げながら、○○○はよいしょっ、と体を起こした
同時に、外からトワの声が聞こえる
トワ
「ナギさーん!これは・・・」
ナギ
「倉庫だ!落とすなよ!!」
バタバタと足音が船を駆け回る
どうやら、ナギとトワが買い出しから戻って来た様だ
ソウシ
「あ。ナギに言っておかないとね。今日は外で食べるって」
2人でナギの声のする方へ向かった