☆シン☆

□ rubeus(後編)
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宇佐美
「今夜、お前は主の餌となる」


燭台を持った宇佐美が屈んだ姿勢のまま○○○にそう言い放つ



○○○
「え・・さ・・・?」



宇佐美は冷笑を浮かべ鉄格子の隙間から○○○の頬を撫でた

首にその手が触れたかと思うとチク、と、小さな痛みがそこへ走る

その冷たい手の温度を感じ、○○○は思わず身を後ろへ引いた



宇佐美
「最高の夜を・・あなたに・・・」



宇佐美の声が遠くなり○○○の目の前が暗くなってゆく




○○○
(シ・・・ンさ・・・)




未知の恐怖に心を怯えさせ、シンの姿を脳裏に描きながら○○○は意識を失った





ヴァンパイアとは何処から来たのだろう?

何故、私達はこのようにしてしか生きられないのだろう。

人間は、私達にとって餌以外の存在になりえるのだろうか?




コンコン




瑠唯(ルイ)
「どうぞ」


宇佐美
「失礼致します。今夜のお食事です」





天蓋の付いたベッドに横たわる瑠唯の目の前に差し出られたのは、スヤスヤと寝息を立てて眠る○○○





瑠唯
「まだ・・・少女じゃないか・・・」


宇佐美
「おや?お気に召しませんか?」


瑠唯
「・・・」


宇佐美
「いい加減、お食事をなさって下さい。いくらあなたが人間を襲う事に嫌悪感を覚えてもこの運命からは逃れられません」





お体もこんなに弱って・・・

宇佐美は瑠唯の頬に手を添えながら、心配そうにその端麗な顔を覗き込む





宇佐美より少し明るい金色の髪にコバルトブルーの青い瞳

血管が透けそうな程白い肌

細いその体は、まだ少年の名残を残していた





瑠唯
「・・・」


宇佐美
「あなたが食事をしないというなら、この少女の首をかき切ってその血だけをお持ちしましょう」




宇佐美が○○○を抱きかかえ、部屋を出ようとする




瑠唯
「待て・・・っ!!・・・っ・・わかった・・・」





瑠唯は体をベッドから起こし、宇佐美の腕から○○○を受け取る




宇佐美
「どうぞ、存分に・・・」




パタン、と、宇佐美は部屋から姿を消した

瑠唯は腕の中で眠る○○○を見ながら、小さくため息をついた

そのまま、○○○をベッドへ運ぶ





○○○
「・・・ん・・・」


瑠唯
「夢を見ているのか・・・」





ヴァンパイアは夢を見ない

眠る時は目を瞑り、漆黒の闇に意識を沈めるだけだ

ツ・・・と○○○の目から流れ出る涙





○○○
「シ…ンさ・・・」


瑠唯
「・・・恋人の名・・か・・・?」





瑠唯はそ、と、その雫を指で掬い取る様に拭う



ベッドの上で胡坐をかきながら、横たわる○○○を見た



瑠唯は思う




私にも・・・こんな風に、誰かを強く愛せる日がくるのだろうか?



誰かを想い、涙を流す日などやってくるんだろうか?


ヴァンパイアとして生まれた私に・・・

ふ、と、自らを自嘲し、口元を緩める






瑠唯
「愚問だな・・」



○○○の首に手をかけ、肌をなぞる様に添わせた


暖かい、人の温度

トクトク、と聞こえる血がめぐる音



生きている証を指先で感じながら、瑠唯は○○○を見つめた




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