鏡ちゃんと先生

□鏡ちゃんと先生.19
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スキー合宿から帰ってきて普通の学校生活が始まるが、それまでとは何かが少し違っていた。




先生は私のことを避けるようになったし、目を合わせることもなくなった。

私は私で、避けられているのに追いかけるような真似が出来ずにただ、遭難した時のことを後悔するばかりだった。
あの時、どうしてキスなんてしてしまったのだろう。あの時の自分は何を考えていたのだろう。

どうしようもない後悔の念ばかりが押し寄せてくる。
私はまた、授業をさぼりがちになった。

屋上でサボったり、保健室に行ってみたり、途中で帰ってみたり、と以前の私に戻ってしまったように思った。
慣れたつもりでいたけど、やはり人に避けられるというのは辛いものだな。

開きかけていた心が閉じてしまいそうだった。

それでも毎日学校にやってきては、先生の姿を探している自分には嘘がつけなかった。



嫌われたのかな。
…。

低く、どんよりした雲から白い雪が降ってきた。

私はどうしたいのだろう。苦しいな。
今までの楽しかったことなんて、消えてしまったみたいだ。もしかするとアレは夢だったのではないかと錯覚に陥るくらい、今の視界には色がなかった。




先生を見なくなってから、もう2週間が経とうとしていた。


私はそれに慣れることなく、少しずつ時が流れていくのを感じていた。
もう、このまま…終わってしまうんだろうか。







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理沙子side



私は正直パニックになっていた。
雪山でのことが、未だに頭の大半を占めていた。
藤咲の顔を見るたびに頭がショートする。だから、敢えて避けていた。…そう、避けていたのは自分なのに。
今まではたまに姿は見ていたのに、最近は藤咲の姿を見ることもなくなっていた。

藤咲が姿を見せなくなってから、もう2週間近くになると思う。

授業中も、休憩時間も。登校時間も、下校時間も。
藤咲が学校に来ているのか、来ていないのかもわからなかった。



今はどうやって探したらいいか、探してどう声をかけたらいいかがわからなかった。
前まで私はどんな風に藤咲に接してきただろう。どんなふうに笑っていたのだろう。

職員室で聞こえてきた、藤咲の噂。
またサボり始めていることや、授業態度が悪いこと。
前まで当たり前にできていた声掛けができないほどに、私と藤咲の心が離れていた。




このままではいけない。
そう思いつつも、体が動かないでいた。藤咲のことを思うと、どうしても雪山での出来事が蘇ってきてうまく言葉にできない。


どうしてあの時藤咲は私に、キスをしたのだろう。
何を思ってキスを…。




考えてもわからず、結局今日も藤咲のことを探せずにいた。






もうすぐテストがある。
進学校でもあるうちの学校は
テスト前になるとどうしても少しピリピリした空気になる。
私も気を引き締めていかなければ…。








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