鏡ちゃんと先生

□鏡ちゃんと先生.8
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知らない番号から電話がかかってきた。

私のケータイ番号を知っている人なんて限られている

それにしても知らない番号からの着信なんてどうしろと言うんだ。

私は暫くケータイのディスプレイとにらめっこしていたがくだらなくなってケータイをその辺に放り投げ、ソファーに倒れ込んだ。

ケータイは依然としてバイブレーションが鳴り続けている。

「誰だよ…」
私は知らない番号からの電話にでた。

『もしもし!?と、籐咲のケータイですか?』

つい、電源ボタンを押したくなった。
どうにか思い止まったが、未だ疑問は消えない。

なんで先生が私の番号を知ってるんだ…?

「現在、この…」
『よかった!籐咲ね?』

先生は私のボケも天然スルーで勢いが止まらない。

「…何か用?」
諦めて用件を聞いてみることにした。
先生は電話の向こう側でひどくしょげているようだった。

『あの…、あのね…』
先生が涙声になるものだから、私は内心慌てた。
『……。』
ついに先生は何も言わなくなり二人の会話が途切れた。

「なんかあった?」
私は自分が思ったより優しい声音で先生に話し掛けていた。
『…迷子』
「は?」
先生は拗ねたように"迷子"と告げた。
なんだ、それ。
「ま…迷子…」
開いた口が塞がらないとはよく言ったものだがまさにこのことだ。

『あの…』
「何?」





『…………迎えに来て』




涙目で困っている先生の姿が浮かんだ。

そういうことするなよ…か…。
私はハッとして自分の頭を押さえた。自分は今なんて言うつもりだったんだ?



"そんなことするなよ、可愛いから"…?


「ありえねぇ」
口ではそう言ってみても頬の紅潮は引かず、私は顔を手で覆いつつ何故だかわからない舌打ちをしてみた。




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