鏡ちゃんと先生
□鏡ちゃんと先生.6
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「適当に座ってて。風呂入ってくる」
籐咲はそう言い残し、バスルームへと消えた。
『…』
1人残された私は、黒塗りのこの簡素な部屋には少し不釣り合いな大きなソファーに腰掛けた。
落ち着かない。
なんだかそわそわしてしまう。
シャワーを浴びているのだろう、その音が微かに聞こえてくる。
どうしよう…落ち着け私、落ち着くのよ。
そう言い聞かせてみても落ち着くどころか余計神経質になっていく自分がいた。
私は大きなソファーに深く座り、膝を抱え込んで目を閉じた。何も情報を入れないように目を堅く閉じた。
「……ふぅ」
どれくらいの時間目を閉じていただろう。大きく息を吸って、それから息を吐いた。ため息と共に今までの緊張が抜けた気がした。
私は目を開けて頭の中に情報を入れる。ここが籐咲の部屋。
家具が少なくて広い感じがする。でも不思議と落ち着ける気がした。私はソファーから立ち上がってその辺をうろうろと歩いてみた。
「コレは…」
私は机に置いてあった一枚の写真を手にとった。
そこに写っているのは、黒髪の少年と金髪の少女だった。
…いや、これはもしかしたら…黒髪の少女と金髪の少女かも知れないわね。
「何見てんの?」
気が付けば、後に籐咲が立っていた。
湯気が立っているところを見ればついさっき上がったのだろうと思う。
『あ、えっと…写真』
私が正直に写真を差し出すと、籐咲は不思議そうにそれを眺めた。
『これ、籐咲?』
「んん、そうだよ」
思った通りの答えをする。
そう、黒髪の少年はやはり幼い頃の籐咲だったのだ。
籐咲は頭を拭きながらキッチンへと入っていく。
『この、金髪の子は…?』
私の質問に、籐咲は顔も見せずあっけらかんと
「名前忘れた」
と、はっきりそう言った。
なんて子なんだ。そう思わざるを得なかった。
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