鏡ちゃんと先生

□鏡ちゃんと先生.2
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私は次の日から遅刻も早退もすることなく学校へ通うことになった。

ちゃんと行くことになったはいいが私の体のことはどうにもならない。満員電車には乗れない。バスももちろん無理。

歩いていくと多分家から学校まで1時間半はかかる。

私はその日家に帰ってから漠然と明日からのことを考えているのだった。



家は学校からいくらか離れた街中のマンション。多少高いが親の残した莫大な金のおかげで金銭面での心配はない。
オートロックで防犯などの心配もあまりない。だから女子高生の身分で一人暮らしなどができていたりするわけだ。

最近の女子高生にしては殺風景な部屋に置かれた最小限しかない飾り気のない家具。ソファーにベッド、机だけ。

部屋は無駄に広いのに家具も人も、あまりにも少ない。少なすぎる。
しかし私にはこのくらいが丁度いい。


立ち上がりベランダに続く窓を開けて外へ出る。
無機質に光るライトが見える。

下を見下ろせば地面が。ここから飛び降りれば死ねるという高さがある。
10階なんてそんなものか。


『…』


ポケットに手を突っ込みそこにある物を握る。握ったままポケットから取り出すと私が握った握力で少しクシャッっとしたタバコのケース。

残りはあと4本。
明日の夜にでも買いに行こう。

私は残りも少ないタバコの一本に火をつけ口に含み暗い空に白濁色の煙を吐き出した。




****




部屋に戻り電気もつけずソファーに腰をかける。
することもなくぼーっとしていると点滅する光を放つケータイが目に入った。


メールが着てる?

ケータイを手にとって開くと一件メールが入っていた。

『なんだろ』


件名はなし、送り主は浅原花(あさはらはな)。中学の時はずいぶんとメールした相手だった。最近はぜんぜんしてなかったことを思い出す。

内容は絵文字もなしで”降りて来い”

着信があったのはついさっきだ。ということは下で待っている、と?


私は薄着の格好のまま下に降りた。今はもう6月も近い。
寒いなんてことはないだろう。









下に下りると白い服に黒い髪を少し巻いた女性が立っていた。
サングラスをかけている。

昼間でもあるまいし、とか思うけど…。


『どうかした?』

「あんたご飯は?」


唐突に質問されたが中学の頃はこれが常だった。
”ご飯は?”あるいは”あんた大丈夫?”だった。


『まだ』

「食べるつもりなかったでしょ。」


頷きはしないが図星。今日はそんなにお腹も減ってなかったし食べるつもりなど毛頭なかった。


「そんな鏡に朗報でーす!はい、ついておいで」

『ちょ、まっ…』


ついて来いというわりに腕を掴み引っ張るのはどうかと思うんだけど…!
最近というか今日引っ張りまわされてばっかりじゃないか?私…








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