*頂物*

□我が儘姫のきまぐれ
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カッコいいなんて言ってあげない

好きだなんて、言ってあげない

わがままも全部聞いてよ



…あたしって可愛くない



『コンビニ、つきあって』

可愛げのない用件だけを打ったメールを彼に送り、パタンと携帯をとじた


夜の9時前、外は真っ暗。
なんだか寂しい気持ちになって、階段を小走りでかけおりる。


ロビーにはすでにお目当ての人が。


「今メールしたばっかりなのに。」

「メールくる前からここで新聞読んでたんだよ。」


そう言った彼は黒縁メガネをかけていて。
初めて見るからなのか、一瞬カッコいいなんて思ってしまった。

「…手塚のくせにむかつく」

「なんでだよ」
手塚は呆れ顔で行くぞ、とあたしの頭にポンと手を乗せた


…非常にむかつく。
手を乗せられていたところがあつい
こんな小さなことで頬が緩んでしまうなんて。

「手塚のくせにーっ!」

「だから何がだよっ!」


いーから!とコンビニに向かって小走りする

呆れた顔してても、ちゃんとついてきてくれる。
手塚のこういうとこ、すき。


「急にアイス食べたくなって」

「だろうと思った」


扉をあけるといらっしゃいませと店員の声がする


「てづかぁー、おごって」

「…だろうと思った」


まぁアイスぐらいいいけどと、手塚はあたしのお目当てのアイスを取る

…どのアイスって言ってないのに


「…………」

「え、違った?」

手塚はどれ?と他のアイスに目をやる

「んーん、合ってた。」

そっか、と手塚はアイスを片手にレジによる


あー…なんかまた嬉しい


「ねー手塚、あんたあたしのことよくわかってるね。」

「…は?」

なんで急に、と手塚は不思議そうな顔をする

「あたしがアイス食べたいって思ってたのも、おごってって言うのも、どのアイスが食べたいかも、全部わかっちゃってたじゃない」

「…まぁお前のことだからな、わかるよ」


「…手塚、本当あたしのこと好きでしょうがないのね」

「っ!」

顔を赤くする手塚を見て、たまには素直になってみようかな、と思った。



「あたしも手塚すきよ」



我が儘姫のきまぐれ
たまには愛でもささやこう

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