□刀の混じる、音が鳴る。
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背中の大きな傷




夢主「私の背中の傷、ご存知ですか?」

土「…知らねぇ。」

夢主「私が昔、攘夷戦争で戦ってた時に、ある戦友が私を庇って死んだんです。」

土「………」

夢主「この傷は、その目の前で死んだ戦友に、つけられたんです。」

土「は?」

それじゃあ意味が分からない。

夢主「油断してた私の背中守って死んだんです。」

夢主「その人、優しかったから自分を恨むな。後悔するなら俺を恨め、とバッサリ。」

土「……」

夢主「彼なりの優しさなんです。…でも、私のせいで死んだ事に、変わりはないんです。」

だから、強くなりたい ――

月明かりが夢主を照らす。
紅い二つの目が、俺をとらえる。

土「そう、か…夢主は、後悔してんのか?」

夢主「後悔なんてしてません。ただ、少し悲しかったです。私の為に命を張るなんて…」

夢主「私が弱くなかったら、あいつは死ななかったって…でも、助けてくれた命、大事にしなきゃって思って。」

夢主「もう繰り返したくないから、私は力を求め続けるんです」

愛想の良い笑顔は、どことなく悲しみを帯びていた。

土「…がんばってんだな」

頭を撫でてやると、猫みたいに気持ちよさそうにする。

夢主「はい。私は、あなた達も守れる位強くなりたいです」

土「…そうだな。」

土「でもな、夢主」

夢主「はい?」

きょとんとする夢主。

休みなく働いてる夢主を心配してる隊士もいる。

夢主をきずかって、夜、徹夜で書類を終わらせて昼間に寝てる夢主をきずかってる隊士。

俺も、近藤さんも、総悟も、

土「なにかを守ろうとしてる自分を、守ってくれてる奴がいる事を忘れんなよ」

少しみひかれた目。
すると、嬉しそうな顔になる。

夢主「…はい!」


少し、ほんの少し、
夢主が、俺を見てる事に嬉しく感じた。

ほんの些細な幸せ。



平和すぎて、
何気ない毎日が、幸せで、






だから、迫る闇にきずかなかった。






ドタバタと走って、こちらに迫ってくる足音。



山「副長ォォォ!!!!」

夢主「山崎…?どうしたの?」

山「は、春雨軍団が大量で江戸におりてきています!!江戸に爆弾をおとすかもしれません!!」

土「な…!?」

夢主「…っ」

…ついに来やがった。
いつか来るだろうとは思っていた。

土「……全員叩き起こせ」

山「は、はい!!」

去っていった山崎。

夢主「………」

土「………」

嫌な沈黙が流れる。

夢主「……とうとう、ですね」

土「…こんなに早く来るとは思わなかったがな。」

来てしまったものは仕方がない。
俺たちの町だ。

俺たちが守らなくてはいけない。

夢主「きっと大きな戦争になります。まだ一時間程時間があるはずです。」

土「あぁ。」

夢主「多分江戸には見張りが2、30人いると思われます。私、先に行ってますね」

土「な、一人でか!?」

夢主「副長、私を誰だと思ってるんですか?」

危険な状況に変わりはないのに、ニカッと笑う夢主にどこか安心してしまう。

土「……」

夢主「それに、強力な助っ人もいますしね!」

万事屋の事だろう。
悔しいがあいつは強い。

夢主を任せられる。

土「…行ってこい」

夢主「はい…!!」


門まで送ろうと、ついていくとそこには見慣れた顔があった。

夢主「銀時…!」

銀「おーおー、やっぱドンチャン騒ぎ起きるみてぇだなァ…?」

土「お前…っ!」

知っていたのか…?
いや、だがこいつは一般人だ

銀「なーんか血が騒ぐと思ってたんだよね。」

夢主「さすが銀時。白夜叉の血でも騒いだの?」

銀「みてぇだな?ほら、乗れ。」

夢主を後ろに乗せると、こっちを振り向いた。


銀「夢主はここにいるから…お前ら全員死んだりなんかしたら殺す!」


土「誰が死ぬか。…お前も、夢主も、死ぬんじゃねーぞ!死んだら俺がぶっ殺す!」


夢主「…ははっ、副長命令ならまもらなきゃ」


これが最後になるかもしれない。

夢主「…でも、…土方さん。私と、次に会った時には、もう私ではないかもしれません。」

…?どういう事だ。

銀「夢主?」

夢主「ごめん銀時、行こう?」

銀「ああ」

夢主は俺に頭を下げた。


そして見えなくなる前に、

余計なことを考える前に、



俺は屯所に戻った。







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