短編
□暗黒の眠り姫(笑)
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鞍「…はあ…よく分からん」
その日の五時間目。
鞍馬は百獅鬼由羅について考えていた。
どうしてだ、普通の人間なら俺を一目見ると目を輝かせるのに。
鞍「…はあ」
由羅「何溜息ばっかついてんのさ」
鞍「いや、…由羅という男の事を…は?」
一人で呟いた言葉に返事。
それも、本人から。
顔を上げると、ニヤニヤと笑う由羅の顔。
鞍「お前っ…!さっきまで寝てたではないかっ」
少し小さな声。
由羅「起きちゃ駄目な訳?もう眠たくねーし」
ふあぁ、と欠伸をすると由羅はさらに腰を捻り偉そうに俺の机に肘をつき、手のひらに頬を乗せた。
由羅「俺ん事考えてたの?」
鞍「なっ…お前は一体なんなんだ。この俺様にあんな口の聞き方をっ」
由羅「いや、だって邪魔だったんだもん。教室の扉の前で突っ立ってる奴いたら蹴り飛ばしたくなるじゃん」
髪を耳にかけ、当たり前のようにそう告げる由羅。
…髪綺麗だな、コイツ。
鞍「…自己中だな、お前」
由羅「お前に言われたかねーよ」
ベ、と舌を出す由羅。
鞍「…ふん、というか、お前人と普通に話せるんだな」
由羅「はーあ?どういう意味だよ」
鞍「嫌味ったらしい事しか言えん奴だと思ったよ」
由羅「…あん時は眠かったしイライラしてたから。言っただろーが…それに学校だと巴衛としか話さねーから勝手な噂流れてるし…なんか今更友達作りとか無理じゃん」
鞍「巴衛と仲良いのか?」
由羅「まあね」
ふーん…巴衛にはどんな話し方をするのだろうか。
あの狐に偉そうな事をすれば、一瞬で燃やされそうだがな。
鞍「…俺とは話して良いのか?」
由羅「ん?別に、俺皆が思ってる程腹黒くないと思うんだけど」
鞍「口は悪いだろう」
由羅「そーか?」
鞍「お前自覚ないのか」
由羅「あるよ?(笑)」
鞍「なんなんだお前は…」
由羅「まだ名前覚えてくれてないの?」
鞍「そういう意味では…」
由羅「そ?ならいいけど。ってかお前巴衛と仲良いのか?」
鞍「仲が良いことなど一ミリもありえん!」
由羅「えー、仲良くしなよ。アイツからかうの楽しいじゃん」
鞍「お前…巴衛まで黙らせる口の悪さなのか?」
由羅「えー…俺悪いイメージつくじゃんかよ。違うと思う、多分。でも巴衛をいじるのは楽しい」
なんだ、普通に話せるやつじゃないか。
にしても表情のころころ変わる奴だな。
鞍「お前やっぱり相当腹黒いだろ」
由羅「そんなに俺って印象悪い?」
鞍「まー…今のでだいぶんマシにはなったな」
由羅「本当?」
少し嬉しそうな顔をする由羅。
はらりと、
耳にかけてた髪が、
おちて、
鞍「お前…髪綺麗だな」
つい、触ってしまった髪。
指がするりと通り抜ける。
由羅「なっ…!?」
少し大きくなった声。
幸い、教師は気付かずに授業を進めている。
慌てたコイツ顔を見ると、右手で口を隠して顔を赤くさせていた。
鞍「は?」
そんな表情に訳が分からなくて、戸惑う鞍馬。
由羅「は、…いや、ちょっ、待って。いきなりそういう事言うなっ、慣れてないからっ…」
さっきまで偉そうな表情が一瞬にして赤みを増し、慌てふためいている。
なんだ、コイツ…。
鞍「お前、こういうのされた事ないのか?」
由羅「いや…普通する側だろ…」
鞍「されるには慣れてないってか?」
由羅「まあ…」
鞍「…名前で呼んでいいか?」
由羅「お?おう…」
鞍「由羅…俺、お前の事気にいった」
由羅「はあ…そりゃドーモ」
鞍「今俺様を一目惚れした皆の気持ちが分かる…!」
由羅「は?お、おい、」
鞍「どうやら俺はお前にそれをしたようだ」
由羅「はあっ!?」
ガタン、と俺の席から椅子を離す由羅。
鞍「ふっ、ははっ…!」
由羅「わ、笑う事ねーじゃんかよ…」
少しぶすくれたような顔をする由羅に、鞍馬は優しく笑った。
鞍「お前…可愛いな」
由羅「ぅえっ!?」
ガタッ!!
立ち上がる由羅。
皆が由羅と鞍馬を見る。
シーン、と静まる教室。
と、思いきや
「きゃーー!!鞍馬様が由羅様を可愛いって言ったわー!」
「さっきから見てたけど由羅様って凄くウブなのねー!」
「ふふ…これは萌えるわ!巴衛様だけでなく、鞍馬様にも言い寄られるなんてっ…!総受けねー!」
「いや、でも夜は眠り姫から黒王子にっ!きゃー!なんでもいいわもう!」
「なんだ今の百獅鬼の顔!?…俺百獅鬼とならイケるっ!」
由羅「…な、何が起こっているんだ…」
顔を赤くしたままの由羅。
授業そっちのけで騒ぐ腐女子共。
あれ、男も…。
鞍「くっ、ははっ!いいだろう、俺は今日から本格的にコイツ…いや、由羅を狙う!」
また起こる黄色い悲鳴。
由羅「?…ん?なんだ?何が起こってんだ?」
ハテナを飛ばしまくる由羅。
教師は唖然とし…。
席からたったまま首をかしげる由羅の首根っこを掴み、引き寄せ抱きしめる鞍馬。
由羅「わっ!ちょっ…!」
鞍「由羅!俺と付き合えっ!」
そうして五時間目終了のチャイムがなったのだった。
(暗黒の眠り姫(笑))
黒い笑みと眠っている時のギャップ
本当は長編にするつもりだったけどこれで終わりにしよう…w