猫のかつろ。

□第3訓 猫の戦友
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宴会のどんちゃん騒ぎから一週間。


由羅「お前が引かねぇってんなら、こっちから出向いてやるよ。
だから俺の周りを嗅ぎまわって危害を加えるのはやめろ」

「出向く?俺は早く帰ってこいって言ってんだ。何もお前とやり合いたい訳じゃねぇ」

由羅「言われた事はやってる。やってるからアイツを返しやがれ」

この物語の主人公である百獅鬼由羅は、見廻りと称してある場所へと出向いていた。






*猫の戦友*



ーーー数時間前
<屯所>



由羅「トシィ、書類終わったから持ってきた。入るぜ」

返事を待つ間もなく由羅は土方の部屋の襖を開け、机へ書類を置いた。


土「ご苦労、おらよ」

由羅が恒例の「一本ちょーだい」を言う前に煙草とライターを渡す。

由羅「さんきゅ。毎度毎度しょーもない書類ばっかで嫌になるわ、嫌いランキング一位がお前なんだけどその次には嫌い。でもトシは一位の座はゆずらねぇ、誇れ」

土「なにをどう誇れと?

由羅「やだなぁ、くだらない侍ジョークだよ」

土「侍ジョークってなんだ」


悪態をつきながらも笑っている由羅を見ると土方は怒る気をなくし、仕事量を考えると言い返すのをやめる。

仕事にも慣れ、隊服が身についた頃には由羅は真選組では一目置かれる存在へとなっていた。
書類は遅いもののしっかりと期日までに終わらせ、目の下にクマを作りながらも何かと仕事を終わらせる。


土「午後から予定ねえんだったらちったぁ寝ろ」

その言葉は本来嬉しいはずのモノだが、由羅は少し渋るような態度を見せた。


由羅「や...見廻りにでも行こうかな」

耳が項垂れてるのを見ると、乗り気ないのは見てわかるが深く聞かれたくないと前回言ってたのを思い出し土方はそうかと一言だけを返す。

由羅がふぅ、と一息煙を吐いたところで「入りやすぜ」と聞き覚えの声が聞こえ二人の視線が集まった。

沖「由羅さんここに居たんですかィ」

由羅「よう、書類渡しにな。なんか用だったか?」

沖「見廻り、休みなしにずっと行ってるだろィ。心配だから近藤さんが一緒に行けって」

由羅「...心配してくれんのはありがてぇけど「俺のやらないといけない書類がかかってるんでさァ、見廻り行けば山崎がやる事になってる。行くぜィ」

有無を言わせない総悟に由羅はしぶしぶ頷き、短くなった煙草を消すと土方の部屋を出たのだった。


ーーーー



真選組を出て、当てもなく道をぶらぶらと歩く二人。

由羅「そう言えば総悟と見廻りって初めてだよな」

沖「由羅さんが書類やるの遅ぇからでしょ」

由羅「期日には終わらせてるし!ダメなんだよなぁ文字の羅列」

沖「まあそんな話はどうでもいいんですけどいつもどこまで見廻り行ってるんでィ」

由羅「いきなり興味なくすの笑うから。...適当にぶらぶらしてるけど」


と返すと沖田は少し目を細めた。

沖「...土方さんは何も聞かねえと思うけど俺はそんなに甘くないですぜ」

由羅は分かってたと言わんばかりに、少し笑う。

由羅「でも見廻りは本当にあてもなく歩いてるだけだよ、俺のせいで関係ない奴らが巻き込まれるのが嫌だから見張ってるというか」

それでも怪訝そうな顔をする沖田。

沖「土方さんも言ってやしたぜ、見回りの時の由羅さんは仕事する気はねぇわ、気だるそうだわでやる気ないのに見廻りに行くわ、そのくせイジリだけはいっちょ前でうぜぇって」

由羅「お、ただの悪口かな?


じっと見てくる沖田に由羅は観念したのか、深い溜息を吐いた。








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