短編

□確かに恋だった。
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*悠太視線

千鶴の少し後。

もう一人、まるで晴天の空を移したかのような真っ青な髪の毛に目。


名は、由羅。


クールな外見。
落ち着く、低い声。

由羅「百獅鬼由羅です。由羅とか、なんとでも呼んで下さい。趣味は寝る事。好きな事は寝る事。一日の大半は寝てます。」

と、自己紹介。

…結構しゃべる。
でも、千鶴みたいにやかましい人じゃない…と思う。


「はーい、質問!」

クラスの女子が質問に手をあげた。
まぁ、顔が良いからね。
質問内容は想像がつく。


"彼女はいるんですか?"


と思いきや、

「童貞ですか!?」


…大胆ダネ。
クラスの女子が顔を赤くして、ザワザワし出す。

先生はため息ついて額を抑える。

男は、…あれ?何で君らも顔赤い訳?


百獅鬼君は、ニコッと笑って「残念だけど、童貞じゃないし、彼女いるよ」と、言った。

えー、と男女。
…いやだからなんで、男。

先生がちょっと焦って席を教える。
…後ろだった。


通り際に目があって、愛想の良い笑みを浮かべる。

軽く、頭を下げた。

多分、この人は人並みに冗談は言うけどムードメーカーとかじゃないと思う。


百獅鬼君が席につくと、…まぁ早速自己紹介の通りカバンを枕にして寝る体制。


…あ、ゴミ。

悠「…ねぇ、」

由羅「んぅ?」

悠「っ、…」







や、ば。

吸い込まれそう、なに、この、瞳。





由羅「…どした?」

悠「あ、いや…髪、」

由羅「え、ゴミついてる?どこ?取って取ってー」


ふにゃん、とわらった。

眠い、のかな


手を伸ばす。
触るのか、この空に。


少し葛藤をして。
きずけばこの人は寝ていて。






ーーー


あれから時がたち、卒業はもう目の前。

ふと思い出した、出会った時の頃。
もう、どれくらい時がたっただろう。

戻れない時間が、過ぎていった。

皆、成長した、のだろうか。
もういつもみたいに制服きて皆で馬鹿する事もないのだろうか。


由羅は、…由羅はすぐ皆に打ち解けた。

由羅は性格が良かった。
皆に愛されるような、

それが皆を引き寄せ、いつのまにか嫉妬を覚えた。
好き、という感情を覚えた。

恋をした。




鮮明に思い出される、夏祭りの日。

由羅からはいろいろなモノを貰ったけれど、夏祭りにとってもらった水風船。


紫と、たくさんの色の線。

千鶴がもってたから、ボーと見てると横から差し出された水風船。

「欲しいんでしょ?ニ個とったから、あげる」



もう、一年以上もたつのに、ソレを見ると思い出す。
今となっては、水しか入ってない。

けど、今までくれたプレゼントの中で一番大切で、一番嬉しかった。

ずっとしてなかった恋をさせてくれた。

由羅に対して、嫉妬もした。
「好きだよ」、とも言ってくれた。

…それは友達としてだったんだよね?





だけど、由羅は同じ年だというのに、成長して、大人っぽくなって一丁前に「彼女」なんてものもいる。


その時の僕には、とても残酷で、感情を消した。

まるではじめから由羅の事なんて好きなんかじゃなかったかのように。

その内感情も麻痺して、好きじゃないなんて言い聞かせて、恋愛感情なんかじゃないなんて。






由羅に対して、嫉妬もした。
「好きだよ」、とも言ってくれた。


きっと、あの時僕らはお互いを好きだった。
ただの、友達なんかじゃなかった。
お互い恋してた。


もし、あの時好きだと伝えていれば?
もし、タイミングを見逃していなかったら?

今頃由羅は彼女の家で愛を深めるでもなく今この時間、隣にいてくれてただろうか。

少し寂しくなるこの夜を、僕の世界を安らかにさせていただろうか。


今となって、そんな事を考えるなんて。


もう好きでもないなんて。
儚かった。
一瞬だった。

愛していた。

だけど、本当に今は友達として、普通に好きだ。

なのに、少し残るこの後悔はなんなのだろうか。
僕は、本当は諦めれてないのだろうか。

自分が分からない。

でも、あれは、あれはきっと、






確かに恋だった。





end

ーーーーーーーー

管理人の思い出。

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