□刀の混じる、音が鳴る。
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戦う為に磨いた武勇



四月、桜が満開に咲いた。
ピンクの花びら。

春風と共に、真選組に初の女隊士がやってきた。
名前は夢主と言って、腕は総語と互角。

実践や、書記なんかもやっていて、性格も明るく真選組ではアイドルみたいな存在になっていた。

顔も凛々しく、面倒見も良い。

近所からもよく夢主宛に物が届いたりもする。
見回りしている時に、人助けなどもやっているらしい。



もう夢主がやってきて1年がたった。

土「ふぅ…」

煙草の煙が空に消え、桜が散っていく。

土「…お前が来て、もう一年もたつんだな。」

夢主「ですね、副長。長かったような、短かかったような」

ふ、と笑う夢主の横顔。
いつ見ても、

惚れ惚れしてしまう程、綺麗だ。

土「そうか?俺は短かったようにしか思えないけどな」

夢主「そうですか?年じゃないんです?」

土「うっせ」

夢主「あはは」

ニカッと笑ってみせた夢主。
赤くなる頬。ああ、自重自重。


俺は夢主に、恋してる。
だが、片想いだ。

土「…万事屋とはうまくいってんのかよ?」

夢主「銀時?うん、まぁね。別に普通にいてるしね」

土「…そ、か。」

少しぎこちなかったか…?

こいつは、昔っから万事屋といたらしい。
万事屋と付き合いだしたのは三年程前。

万事屋の猛烈なアタックに渋々頷いたらしいが、満更でもないみてぇだ。

夢主「副長?」

土「ぁあ?」

夢主「うわ、目付き悪。もう練習時間ですよ?私、稽古教えなきゃいけないからもう行きますよ」

土「…あぁ、もういく。」

煙草の火を消すと、夢主はムッとする。

夢主「煙草、吸いすぎですよ?体に悪いんですから…」

土「これでも減ったんだぞ?」

夢主「どうせ一日四本少なくなったとかでしょ?」

土「う…」

夢主「はぁ…全く、煙草そんなに吸う位ストレスたまってるなら私いつでも相談のりますからね?」

土「あぁ…」

どんだけ細かいとこまで見てんだ…
まぁそんなとこも気を配れて、本当に良い奴だ。

…たまに来る毒舌なんかも、可愛いと思ってしまう俺は重症なのか?

少し歩き、稽古場につくと近藤さんと総悟、隊士がいた。

夢主「おはようございまーす」

近「あ、夢主ちゃんおはよう!」

沖「はよ」

「おはようございます!!」

返される挨拶。
夢主の顔を見た瞬間、皆が笑顔になる。

夢主がニコニコしてるから、つられるのだろう。

夢主「今日は何する?組手、久しぶりに私とする?」

「是非!」

近「お?今日はやる気満々だね」

夢主「やだなァ、私はいつでもやる気満々ですよ!」

沖「いつか疲れて死ぬんじゃないですかィ?」

夢主「自分でもビックリする位、元気だよ!さ、ホラ!始めよ」

動きやすい着流しをきた夢主は、妙に色っぽくて視線のやり場に困る。

近「夢主と相手したい奴順番に並べ!合図は俺がとる。」

俺は見るだけでいい、と近藤さんの横に並ぶ。

「お願いします!」

夢主「うん、宜しくね!」

近「位置について、用意…始め!!」

パシイィン!!!!
竹刀と竹刀。

しなる音。

始めの合図と共に、隊士が夢主に飛びかかった。

夢主は片手でそれを止め、竹刀をはじいた。

隊士はフラッとしつつも体制を建て直す。

夢主「適当にかかってきても、ダメだよ。ちゃんて相手の呼吸に合わせて、」

夢主「こんな感じ…!!」

隊「わ、わわっ!」

パシンッ!と竹刀の音が鳴ると同時に、隊士の持っていた竹刀が宙を舞った。

近「止め!夢主の勝ち!」

土「…いつ見ても綺麗な太刀筋してやがる」

呟いた言葉。
意識はなかった。


それから夢主はどんどん組手をし、倒していった。

土「近藤さん、」

近「ん?」

夢主の組手を見ながら、近藤さんて話す。

土「アイツ、楽しそうだな。」

近「…だな。夢主ちゃん、来た時から強かったけど、成長止まらないね」

土「っとに、いつか総悟も抜いちやうんじゃないか」

近「ガハハハ!見てみたいねぇ、そんなとこ!夢主ちゃんならなれるかもしれないね」

土「あ…そういえば総悟はどこいった?」

近「用事があるとかで、どこかに行ったけど…あ、夢主ちゃん全員倒しちゃった」

土「…早いな」

近「だなぁ。」


あっという間に夜になった。
あまりにも綺麗に咲いた桜を見ようと、少し外へ出た。

夢主「っ、」

夢主がいた。
稽古場、刀で素振をしている。
月の明かりが夢主を照らす。
じんわりとかいた汗。

土「………夢主」

夢主「…ふ、副長!?あ、ごめんなさいっ、きずかなくて…」

土「別にいい。」

本当言うと、少しみとれていた。

夢主「どうしたんですか?もう12時になりますよ、寝れないんですか?」

土「少し桜を見ようと思ってな。…夢主こそ、こんな時間まで」

夢主「私はただ、素振りしたかっただけですよ」

いつ見ても思う。
こんなに、強いのに、
女だから守られていいのに、

どうしてこいつはこんなに強くなろうとする?
もういいじゃねぇか。

真選組にだって、刀を忘れられない、と理由で入ってきた。

夢主「副長…?」

土「…あ、いや」

暇さえありゃあ一人でも稽古して、
強くなりたい強くなりたいって…

夢主「何か考え事でもあるんですか?私で良ければお聞きしますよ」

と、ニコッと笑う。

その笑顔さえありゃあ、力なんてなくても生きていけるだろう。

土「…何で、」

夢主「…?」

土「何でそこまでして強くなりたいんだ?もう強いし、女だし…」









夢主「戦う為です」




その目に、揺るぎはなかった。
何も迷う事もない。

その目に、酔いそうになる。


土「何で、戦うんだ………」





夢主「私は、もう守られすぎたからです。」


夢主「この手で誰かを守りたい。」



夢主「守りたいから、力が必要なんです。」



こいつの過去に何があったかは知らない。

いったい何がこんなに夢主を動かしているんだ?





夢主「私の背中の傷、ご存知ですか?」



(もっと、強く。)




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