青学

□Der Lindenbaum
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君のいない世界はなんて淋しいんだろう。


どの音を探したって、君の声は聞こえない。



ざわめきざわめき、
ざわめきだけで、君の声はどこからも聞こえてこない。


…手塚。


ボクは君の幸せのためならばどんなことも耐えて見せる。

でも、こんなにも淋しいなんて。



だから深夜、ボクだけの時間。
その時間に音楽を聞く。

ピアノの音は心を埋めてくれるって、
前に本で読んだことあったし。

でも今日は、ピアノじゃなくて
歌曲集。



テノールの切ない歌がボクの心を満たして
ボクの周りを満たして
ざわめきが消えていく。



恋人に振られて、町を出る若者。
恋人を思い返す甘い回想。

どこへ行っても自分はひとりだという孤独。



…そう。

ボクはきっと孤独になりたくないんだ。


だから満たして。

手塚への思いをすさんだものにさせないで。




それなのに、

いきなり曲が途絶えた。



消えてしまう。

周りの音楽が
穏やかな空気が

君への思いが。



「駄目だ!」


ねえ、手塚。

こんなにも辛いなんて、思ってもいなかった。
君がそばにいないこと、
傍にいた時の片思いの方がよっぽどマシだと追ってるよ。


音楽が消えた瞬間に帰ってくるざわめき。

これは、どこからやってくるざわめきなんだろう?


「好き…だ……好きだよ…てづか…」


自分の声でざわめきを殺す。


怖いよ手塚。

ざわめきに、君への想いが殺されそうで怖い。




手塚…手塚……

少しでもいい。

わがままは言いたくない。







会いたいよ…。










fin




山なし意味なし落ちなし。
まさにやおいですね!

不二君が聞いている歌曲集は
シューベルトの冬の旅です。
この話は菩提樹がテーマ。

111119





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