青学

□衝動
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言葉がいらなかった。


「手塚?」



抱きしめた、小さくて、華奢な体から動揺した声が聞こえる。

「どうしたの?手塚いきなり…ん…」

不二の問いなどお構いなしに口づける。
上唇をはみ、下唇をはみ、
不二の前歯の裏をなぞる。

「ん!?んん…」

下を絡めあわせ奥へ奥へねじ込む。

「んぐっんっんっ」

唾液でむせたのか、苦しそうな声をあげられたので、唇を離す。
唇の間を糸が名残惜しくひく。


「はぁはぁはぁ…手塚、どうしたの?
いきなりすぎて…なんか…」



理由がなかった。


ただ、目の前にいる不二がすごく愛おしかった。
ただ欲望しかなく、気づいたら抱きしめていた。


「嫌…だったか?」
「いや、ちがう…。そうではないんだけど…。」

目を潤ませた不二を見て、また理性が飛びそうになる。

「そんな、理性とか、いろいろなものが抜けたような手塚に、いきなりそんなことされたら…
どうしていいかわからなくなった。

手塚にそんな顔されたら、ボクはどうすればいいの?」

くたりと座り込み、うつむく。

「もう、戻れなくなる。手塚に溺れてしまうよ…。」



男同士が付き合うのは、間違った道。
お互い好きだろうとそれをわかっていた。

だからキスもしない。

それをいきなり、深いキスまでされるだなんて。


「不二。俺はもうとっくに戻れない。」

肩に触れたら体が少し硬くなった。
硬くなった体を抱きしめる。

「俺と、一緒にいてくれないか。戻れないならせめて。」

「てづか…君はそれでいいの?
大事に育てられてきただろうね、君は。
そんな君に、ボクがついていていいの?」
「ああ。」
「そうか…。」

もう一度、今度は触れるだけのキスをする。

「キス…嫌じゃなかった。
きもちよかったよ。」

「よかった。」


そしてまた唇を重ねた。



fin



なんかタクミくんシリーズみたいな…。
手塚国光「kiss」関連。
理性失って、ディープキスする手塚が書きたかった。


110703

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