青学

□捨て猫
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「不二?」

雨が降っているのに、不二は傘をささずに歩いていた。
雷も鳴っているのに。

「ああ、手塚。お疲れさま。」
「どうして傘をささないんだ?
傘を持っていないのか?」
「ううん。違うんだ。傘は持ってるよ。
ただ雷にうたれるのが怖くて。」
「……。」

どうしたらいいものか。
そんな雨に濡れて、風邪をひかれても困る。
しかし、不二は雷を恐れて傘をささない。


「手塚は…」
「?」


「手塚は濡れた猫を捨てちゃうの?」

「は?」



いきなりなにを。

しかしその言葉で不二の言いたいこと、
…してほしい事がだいたいわかった。


「このままでは、風邪をひく。
仕方ないから俺の傘に入れ。」
「うん。」


不二と相合い傘をしながら話した。

「気づいたみたいだね。」
「何をだ?」
「わざとだって。」
「……。」

不二はいつものように微笑んだ。

「どうせ雷にうたれるなら二人の方が良いかと思ってな。」
「嘘が下手だね、手塚。」
「……。」

「ボク、君のそういうところ好きだよ。」

心底楽しそうに、不二が言う。

「手塚の不器用な優しさが好きだよ。」

不器用という言葉を聞いて、少し気になる。

「不器用なのはお前もだろ?不二。
お前は甘えるのが下手だからな。」

不二は少し目を見開いて、俺を見る。
そしていつもの目に戻って、
「そうだね」と返した。


不二は甘えるのが下手だ。
でもその下手な甘えにまんまと乗って、
深みにはまる。


「あ、手塚の使ってる電車、雷の影響で停まってるって。
僕の家はバスですぐだから、電車動くまで寄って行ったら?」


これもすべて、不二の思い通りのできこと。

「そう…だな。」
「うん。」



不二の不器用な甘えは、俺を確実に陥れる器用さを持っている。


不二には到底かなわない。




fin



なんだこれ…。
不二に「捨てるの?」
って言わせたかっただけ。
だから変な文章です。


110703

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