四天宝寺

□夏のアイツ
2ページ/2ページ


「でも確かに光ってどこも噛まれてへんよなー。」

「なん、またその話。」

俺の部屋でゲームをやっている光をまじまじと見る。

「だってほら、俺はみんなより光の体見る機会があるやん?」
「なんや、エロい言い方やな。」
「夏場でもぜんぜん噛まれないやん。」

「……そりゃそうや。」

聞こえるか聞こえないかくらいの声で光がつぶやく。

「あーあ。
光ゲームやっとるし、俺寝るわ。」

光が背もたれにしているベッドにダイブした。

「30分経ったら起こして。」
「めんどいんで携帯のアラームやっときますわ。」

梅雨の気候の中、コートを走り回った身体は重度に疲労している。


すぐに瞼が重くなった。











「謙也さん、ホンマおいしそう…」


光?

ゲーム終わらせたんかな。


「うん。よぉ寝とる。
はぁ、もう我慢できひん…。」


……光?



「ん…」

耳当たりにチクリとした痛みが走る。

「うま…もっと……」

頬に息を感じた瞬間、ぞくぞくして跳ね起きる。

「ひ、ひひひひひひ光!?」

「…あ、謙也さん。
起きてもうたんですね。」

頬を赤くして、若干興奮したように口元をぬぐった。

「謙也さんの血、おいしかったで。」

「なん!?
なんなん!?
え、おいしかったってまさか、
光って、吸血鬼やったん!?」

さっきの件と今の言葉。

そうやったんか…
光は吸血鬼…。

なんで気づかなかったんや!
俺恋人やろ!

「…いや、吸血鬼…鬼っちゅうよりは
昆虫?」

……へ?

「昆虫?」

光は俺の手を取り、手の甲に噛みついた。
瞬間に感じる痛み。


「俺、蚊なんすわ。」


「……。」


……。


「ははっ、謙也さんビビったから血の気引いたで?
もっとちょうだい…。」

「ら、らめえ!」

光の口元から手を引く。

左手の甲からは俺の血がだらり。

…左手で良かった。


「謙也さんがなんで一番蚊に刺されるんか。
俺が食っとるからや。」

「ああ、なるほど…」

おもわず冷静になる。

「謙也さんの血うまくて…
いっぱい食べたくて…

俺、謙也さんの血吸ってるから
夜は謙也さんの相手できるんやで。」

「え!?そうなん!?」

「蚊が血すうのは子育てのためって、
聞いたことあらへん?」

「あ、ある気ぃする…!」

「俺、もうちょい謙也さんの血吸ったら、このあと頑張れるかもしれへんなー。」

「ええええええ!ホンマにぃ!?」

「うん。ホンマホンマ。
せやから、もうちょいちょうだいや…」


光に再度押し倒されて
首やら腕やらに噛みつかれる。

「あっ、光、そこは…」

ちょっとくらいの痛みなんて関係あらへん。

この後は俺が光を押し倒すんやからな!


血を吸われているうちに、意識がもうろうとしてきた。


「ひか…る…」












「謙也さん、30分たちましたよ。」



「……」


……。


……?


……。



「え、光?
俺、あのあと寝て…」

光に血を吸われて意識を手放したんやろか。
申し訳ないことしたかもしれへん。

「光、もう血はええんか?」

「…はぁ?
なに寝ぼけとんの、きもいっすわ。」

「え、だって光は蚊やから俺ん血吸いたいって。」

「言ってへんわ。
謙也さん、夢でも見てたんでしょ。
俺になにしてたんすか。
きも…」

「え、
お前今最後の台詞はマジでどん引きしてたやろ!
なんちゅう態度や!」

…でもそうか。

あれ、夢やったんか。


確かにあんだけやられたけど、全然痒ないもんな。


「えー、そうかー。

あ、じゃあなんで光は蚊に刺されへんの?」

「はぁ?
そんなん虫よけクリーム3回塗りしてるからにきまっとるやろ。」


…そうか。



「なんやがっかりやなー。」


あの夢のまんまやったら、俺ら今頃イチャイチャラブラブやで…。

「夏はええ夢みないですね。」

ゲームをやめて、片づけている光がいう。

「え、そう?なんで?」

「だってそうやって、謙也さんの夢の中の俺が、謙也さんとイチャイチャするやろ。
そんなんいややから。」


前言撤回。

がっかりなんかやない。



ええ方向やでこれは!



「謙也さんが蚊に刺された所なん、俺が吸いなおしたるわ。」




fin



これでおわりかよ!
終わり方がわからなかった…。

ギャグ目指したんですけど、微妙ですね…。


120702
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ